胆嚢の病気

原因の90%は胆石とされる
急性胆嚢炎(きゅうせいたんのうえん)

監修・取材協力:岐阜市民病院 胆膵内科部長
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向井強

Medical.T 編集部 M.Hioki

  • 主に胆石が胆嚢の出口を閉塞することで、細菌感染による炎症が生じる
  • 自覚症状は右上腹部の自発痛・圧痛が特徴的
  • 初期症状としては、右上腹部の不快感や鈍痛、右肋骨の下の自発痛や圧痛
  • 発症後から数日で病態が変化し、徐々に重症化していく
  • 急性胆嚢炎の90~95%は胆嚢結石が原因
  • 胆嚢結石が原因による急性胆嚢炎の根本的治療は胆嚢摘出術である

急性胆嚢炎の基礎知識

主に胆石が胆嚢の出口を閉塞することによって、細菌感染を引き起こして炎症が生じます。自覚症状は右上腹部の自発痛・圧痛が特徴的であり、腫大した胆嚢が腫瘤として触知される場合もあります。
初期症状として右上腹部の不快感や鈍痛、そして、右の肋骨の下の部分に自発痛や圧痛が起こり、炎症の進行とともに激痛となり、発熱や悪寒、悪心、嘔吐などを伴う場合もあります。発症の数日後から病態が変化していき、浮腫性胆嚢炎、壊疽性胆嚢炎、化膿性胆嚢炎と徐々に重症化します。また、1ヶ月以上経過した慢性胆嚢炎になると手術が難しくなります。

急性胆嚢炎の近年の動向

2000年以降の報告では、急性胆嚢炎の死亡率は1%未満とされていますが、75歳以上の高齢者や糖尿病患者では重症化しやすく、死亡リスクも高くなるとの報告もあることから、より早期の診断・治療が重要となります。

急性胆嚢炎の症状

初期症状として右上腹部の不快感や鈍痛、そして、右の肋骨の下の部分に自発痛や圧痛が起こり、炎症の進行とともに激痛となり、発熱や悪寒、悪心、嘔吐などを伴う場合もあります。

急性胆嚢炎は発症からの経過日数によって病態が変化し、第Ⅰ期(2~4日)では浮腫性胆嚢炎(胆嚢腫大とうっ血・浮腫性壁肥厚)、第Ⅱ期(3~5日)は壊疽性胆嚢炎(胆嚢壁の壊死の始まり)、第Ⅲ期(7~10日)は化膿性胆嚢炎(胆嚢壁全体への炎症波及・胆嚢壁の線維化)と徐々に重症化します。また、1ヶ月以上経過した慢性胆嚢炎(胆嚢委縮、胆嚢壁の高度の線維化)になると手術が難しくなります。第Ⅰ期では早期の腹腔鏡下胆嚢摘出術が可能ですが、第Ⅱ期以降では緊急手術が困難となることが多く、待機的な予定手術となるため、入院期間が長くなったり、腹腔鏡手術から開腹手術へ移行する可能性が高くなります。
また、経過日数による病態変化のほかに、急性胆嚢炎の重症度判定は、治療方針を決定するために重要となります。

急性胆嚢炎の検査方法

胆嚢炎の場合、血液検査によって炎症や黄疸の程度を調べることができます。また、初期検査として身体に負担のない腹部超音波検査が有用であり、容易に診断が行えます。

急性胆嚢炎の原因

急性胆嚢炎の90~95%は胆嚢結石が原因であり、胆石が胆嚢の出口を閉塞することによって、細菌感染を引き起こして炎症が生じます。自覚症状は右上腹部の自発痛・圧痛が特徴的であり、腫大した胆嚢が腫瘤として触知される場合もあります。また、慢性胆嚢炎も胆石が原因であることが多く、胆石による刺激によって繰り返し炎症を起こします。

急性胆嚢炎の治療方法

胆嚢結石が原因で発症する急性胆嚢炎の根本的治療は胆嚢摘出術です。現在は第一選択として、腹腔鏡を用いた胆嚢摘出術(腹腔鏡下胆嚢摘出術)が行われています。腹腔鏡下胆嚢摘出術は傷口が小さく、術後の痛みが少ないため、日常生活への復帰が早いことが特徴です。しかし、炎症などによって胆嚢と周囲臓器との癒着が強い場合や胆嚢癌の合併が疑われる場合など、腹腔鏡下胆嚢摘出術が難しい場合は開腹手術となります。

種々の理由によって胆嚢摘出術が困難な場合には、胆嚢内の感染胆汁を体外へ排出する胆嚢ドレナージを行って胆嚢炎を軽快させることになります。手術リスクの高い急性胆嚢炎症例に対する標準的な胆嚢ドレナージ法として経皮経肝胆嚢ドレナージ(percutaneous transhepatic gallbladder drainage:PTGBD)が推奨されていますが、PTGBDは処置後の疼痛や外瘻維持による生活の質が低下する問題があります。内視鏡的胆嚢ドレナージはPTGBDの短所がなく、患者に対する負担も軽く、入院期間の短縮効果も期待できますが、技術的に難しいことから治療内視鏡のエキスパートのいる施設でのみ行われています。

急性胆嚢炎の予防・対策方法

急性胆嚢炎は主に胆嚢結石が原因であるため、予防としては胆石を作らないようにすることになります。BMIが女性で34以上、男性で38以上の肥満者は、非肥満者に比べて発生率が高いとされていますが、急激な体重減少(ダイエット)も危険因子とされていますので、体重の変動には十分注意する必要があります。胆石の予防には、果実、野菜、植物性蛋白、食物繊維、適度なカフェインの摂取と適度な運動等が良いと報告されています。青魚をたくさん食べて、食事と運動で胆石を予防しましょう。規則正しい生活によって健康を維持することは、万病を予防することにも繋がります。

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