鼻の病気
風邪やアレルギー性鼻炎から移行する
副鼻腔炎
監修・取材協力:耳鼻咽喉科・アレルギー科
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- 副鼻腔炎は顔の骨にある空洞(副鼻腔)に炎症が起こる病気。
- 副鼻腔炎とはいわゆる蓄膿症のこと。
- 短期間で治る急性副鼻腔炎と、長く続く慢性副鼻腔炎がある。
- 主な症状は鼻づまり、膿性鼻汁、後鼻漏など。
- 慢性化すると、頭重感や嗅覚障害などさまざまな症状が付随する。
- 近年、手術は内視鏡下鼻副鼻腔手術が主流。
- 好酸球性副鼻腔炎は、2015年7月に難病指定された。
副鼻腔炎の基礎知識
副鼻腔とは、鼻腔を囲むようにある空洞のことで、鼻腔と細い管でつながっています。副鼻腔炎とは、その副鼻腔を覆う粘膜が炎症を起こして、膿汁などが溜まる病気で、いわゆる蓄膿症(ちくのうしょう)のことです。顔内には、前頭洞(ぜんとうどう)、篩骨洞(しこつどう)、上顎洞(じょうがくどう)、蝶形骨洞(ちょうけいこつどう)という対の副鼻腔があり、どれにも炎症が起こりますが、最も炎症を起こしやすいのが上顎洞になります。
副鼻腔炎は、小児から高齢者まで幅広い年代に発生し、急に発症し短期間で治る急性副鼻腔炎と、症状が長く続く慢性副鼻腔炎があります。慢性副鼻腔炎になると黄色い粘りのある鼻汁が出たり、嗅覚障害、頭重、後鼻漏などの症状が付随され、長期間の治療が必要となる場合が多いようです。
子どもの場合は慢性でも急性の状態に近いため、10歳くらいまでは保存的治療で対処します。大人の場合は、抗生物質の内服や治療による効果が無い場合は手術を行うこともありますが、近年では、概ね薬剤治療で緩和されるようになりました。手術方法においては、内視鏡を用いた手術が主流であり、手術侵襲も軽減され、入院期間も1泊2日から1週間くらいと短くなっています。
副鼻腔炎の近年の動向
近年では、衛生面における住居環境や、医学においても抗菌薬や簡易手術などが発達し、良好となってきたことから、昔のように、年中黄緑色の鼻水を垂らした子どもの副鼻腔炎は減少しています。しかし、新たに違うタイプの副鼻腔炎が増加傾向にあります。以前は鼻かぜからなるタイプの副鼻腔炎が多かったのに対し、花粉症などのアレルギー疾患が増加の一途をたどっている近年では、アレルギー性鼻炎の悪化により発症する人が増え、アレルギー性鼻炎との合併や、血液の好酸球の増加から好酸球性副鼻腔炎になる人が増加傾向にあります。他には、中耳炎を合併している人や、成人から発症する気管支喘息を持っている人、そういった副鼻腔炎では初発症状で、においがしないという特徴もあるようです。
また、成人発症の難治性副鼻腔炎とされている好酸球性副鼻腔炎は、2015年7月に難病指定されています。
副鼻腔炎の症状
主な症状は鼻づまり、膿性鼻汁、後鼻漏(鼻汁が喉に流下すること)になります。ひどくなると、加えて、頭重感、嗅覚障害、顔面の痛み、中耳炎の合併による耳閉感など、さまざまなものがあります。さらには、咳や痰、発熱などの呼吸器症状がでたり、鼻腔から咽に汚い鼻汁が流れることで、痰が絡んだ咳を伴う気管支炎(副鼻腔気管支症候群)となったり、細菌感染による場合では、歯痛と口臭が生じることもあります。
副鼻腔炎の検査方法
鼻の診察のみで、他の検査が不要のこともあります。
検査方法には、画像検査、細菌検査などがあります。レントゲン写真で、副鼻腔に液体が溜まっているかが確認でき、MRI検査では液体成分が膿なのか真菌(かび)なのか、あるいは腫瘍性病変なのかを診断することができます。細菌検査では、鼻腔内の分泌物を採取して、培養し原因菌を特定します。採血で炎症反応などを調べることもあります。
副鼻腔炎の原因
急性副鼻腔炎の場合は、急性上気道炎(風邪症候群)であることが多く、細菌性よりもウイルス性によるものが多いとされています。その他には、アレルギー性鼻炎による粘膜のむくみや鼻茸などのポリープなどによって副鼻腔が詰まることが原因となります。
慢性副鼻腔炎の場合も、原因は急性副鼻腔炎と概ね同じになりますが、多くは細菌感染によるものとされています。歯性上顎洞炎や副鼻腔真菌症から炎症が遷延して慢性副鼻腔炎となり、まれに鼻腔や副鼻腔の腫瘍などが原因となることもあります。
副鼻腔炎の治療方法
抗生物質の内服や、噴霧器を使って副鼻腔に直接噴霧するネブライザー療法、鼻汁を吸ってきれいにする鼻処置、生理食塩水による鼻腔洗浄などの保存的治療を行います。急性副鼻腔炎の場合には、抗菌薬や鼻の炎症を抑える点鼻薬などが使用され、難治性の場合には、原因菌を特定し、その抗菌薬の投与を行い、ステロイド点鼻薬も使用します。
そして、保存的治療で効果がない場合には、手術を行います。かつては苦痛が伴う辛い手術でしたが、近年は内視鏡を用いて、粘膜除去や鼻茸(ポリープ)切除などを行い、痛みや出血の少ない内視鏡下鼻副鼻腔手術が主流となっています。また、安全で的確な手術ができるようにさまざまな手術支援機器が開発されています。
副鼻腔炎の合併症
アレルギー性鼻炎、髄膜炎、視神経炎、海綿静脈洞血栓症
副鼻腔炎の予防・対策方法
予防としては、風邪を引かないようにすることが大切です。規則正しい生活を心掛け、バランスの取れた食事をし、睡眠をしっかり取りましょう。また、風邪をひいてしまった場合も、無理せず、休養し、早めに治療することで副鼻腔炎への移行を防げます。
アレルギー性鼻炎の方など、常に鼻に炎症がある場合は、定期的な鼻洗浄をオススメします。鼻洗浄は風邪予防や花粉症対策にもなり、再発防止にもつながります。
鼻づまりがある時は、お酒を控えるなどし、鼻づまりを悪化させないようにしましょう。また、鼻づまりを解消するために市販薬を使う場合ですが、市販薬は血管収縮薬のため、即効性はあるものの使用し続けると効かなくなります。さらには鼻の粘膜が腫れてくるという難点があり、薬剤によって鼻炎になることがあるので一時的に使用し、長く何度も使わないように気を付けましょう。
副鼻腔炎のリスクチェック
□風邪をひいた後も鼻水、鼻づまりの症状が続いている
□黄色い粘着性の強い鼻水が出る
□嫌な臭いの鼻水が出る
□においがわからない
□ほっぺたの辺りが痛い
□目の奥辺りが痛い
□おでこや前頭部が痛い
□熱がある