夏の皮膚の病気
虫刺されや小さな傷から初発し、伝染力が強い
とびひ(伝染性膿痂疹)
- とびひには2種類のタイプがある。
- 夏場、乳幼児に多いとびひは、水ぶくれになる水疱型膿痂疹。
- 虫刺されや小さな傷などに原因菌が入り初発する。
- 治療は清潔を保つことが基本。
- 伝染力が強いので、患部を覆う処置をして拡散を防ぐ。
- 鼻の穴の入り口に原因菌が多いため、鼻を触る子は特に要注意!
- とびひの基礎知識
- とびひの近年の動向
- とびひの症状
- とびひの原因
- とびひの治療方法
- とびひの合併症
- とびひの自宅療法(療養方法、再発防止など)
- とびひの予防・対策方法
- とびひのリスクチェック
- とびひのセルフチェック

とびひの基礎知識
代表的な皮膚の細菌感染症で、掻いた手などを介して菌がうつり、火事の飛び火のようにあっという間に全身や他人に次々と広がることから、“とびひ”と言われています。
とびひには、暑い時期に乳幼児に好発する水ぶくれタイプの「水疱型膿痂疹(すいほうせいのうかしん)」と、季節問わず発症し、大人にもみられる、かさぶたタイプの「痂疲型膿痂疹(かひせいのうかしん)」があります。どちらも、アトピー性皮膚炎の患者に発症しやすいという特徴もあります。
とびひの近年の動向
とびひ(水疱型膿痂疹)の発症原因は主に黄色ブドウ球菌によるものとなっています。しかし、近年はメチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)※による、とびひが増えているようで、この菌は通常の抗菌薬が効かず、完治に時間がかかります。
※MRSAの病原性は通常の黄色ブドウ球菌と比較して特に強いわけではなくそれらと同等程度の各種感染症を引き起こす。したがって、通常の感染防御能力を有する人 に対しては一般的に無害であり、医療施設外で日常生活が可能な保菌者の場合は、除菌のための抗菌薬投与は基本的には必要ない。(国立感染症研究所(IDWR 2002年第18号掲載)より抜粋)
とびひの症状
乳幼児に好発する水疱型膿痂疹は、水ぶくれを形成します。小さな傷や虫刺され、湿疹、アトピー性皮膚炎などの掻きむしった部分に初発します。最初は、かゆみの伴う炎症の少ない小さな水疱の集まりから始まって、数日で大きくなり破れやすい水ぶくれになります。水ぶくれが破れるとジクジクした赤い肌のびらんになり、細菌を含む液体があちこちに飛び火し、感染して新たな水疱となります。破れた水疱の部分は黄色いかさぶたとなり、1週間から10日程で治癒します。全身に広がった場合は37~38度くらいの発熱があることもあります。
大人やアトピー性皮膚炎の人がかかりやすい痂疲型膿痂疹は、小さな紅斑から始まり、多発性の膿がたまった皮疹ができて、黄褐色の厚いかさぶたを形成します。のどの痛みや発熱を伴う場合もあります。
とびひの原因
とびひは、黄色ブドウ球菌とA群β溶血性連鎖球菌という2種類の細菌が原因で発症します。
水疱型膿痂疹は、主として、水ぶくれを引き起こす毒素を産生する黄色ブドウ球菌が表皮の角層で増殖することが原因です。鼻の中にいることが多いため、鼻を触った手で小さな傷や虫刺され、アトピー性皮膚炎などの皮膚の炎症部分に触わることで感染し、とびひになる場合がよくあります。そのため、乳幼児の鼻の穴の周囲に発症したり、保育園や幼稚園などで集団発生することが多くみられます。
痂疲型膿痂疹は、A群β溶血性連鎖球菌や黄色ブドウ球菌が表皮の角層の下に感染して発症します。両方の菌による混合感染も多くみられます。発症年齢も幅広く、季節を問わず発症しています。

とびひの治療方法
基本的には、皮膚の表面にいる菌を減らすために、石鹸で洗ってシャワーなどで流し、患部を清潔に保つことが大切です。小さな水疱をみつけたら、基本処置をして、感染が広がらないようにガーゼなどで患部をカバーし、皮膚科へ受診しましょう。処方された内用抗菌薬を服用し、清潔にした患部に外用抗菌薬を塗って治療します。軟膏を塗った後も、菌が拡散しないように患部を覆います。
とびひの合併症
水疱型膿痂疹の場合は「ブドウ球菌性熱傷様皮膚症候群」に移行する場合があります。
痂疲型膿痂疹の場合は「糸球体腎炎」を起こすことがあります。
とびひの自宅療法(療養方法、再発防止など)
毎日入浴して、清潔を保ちます。かさぶたになるまではうつりやすいので、患部をガーゼなどでカバーし、菌が拡がらないようにします。また、家族でタオルの共用などはやめましょう。
とびひの予防・対策方法
病原菌がついた手で、皮膚や粘膜をさわることによって感染することが多いため、こまめな手洗いが重要となります。鼻の周囲に傷や虫刺されがある場合は、その部分から感染しやすくなるので、覆うか、常に清潔を保つようにしましょう。
アトピー性皮膚炎の子どもは、感染しやすいので、特に注意してください。
とびひのリスクチェック
□ 5歳以下の乳幼児。
□ アトピー性皮膚炎がある
□ 虫刺されや傷、皮膚炎などがある
□ 鼻をよく触る
□ 保育施設などで、集団生活をしている
とびひのセルフチェック
予防・対策はしっかりできていますか?
□ 手洗いうがいをしっかり行う。□ タオルは共用していない。
□ 毎日入浴し、清潔を心掛けている。
下記のような症状はありますか?
□ 虫刺されや傷部分に水ぶくれができている。□ 傷や炎症が広がっている