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不妊の原因が明確な場合は早期治療を!
妊娠と不妊治療

監修・取材協力:可世木レディスクリニック院長
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Medical.T 編集部 M.Imase

近年、約10組に1組が不妊のカップルと言われていますが、結婚年齢が高くなっている近年では、もっと高くなっていると想定できます。将来の自分やパートナーのためにも、妊娠に関する正しい知識を身につけておくことが大切です。

妊娠と不妊治療-基礎知識

女性は生まれつき2つの卵巣に、およそ50万個の卵子をもって生まれます。月経がはじまると、約28日に1回、1個の卵子が排出されます(排卵)。排卵された卵子は卵管膨大部で精子を待ちます。子宮頚管を通って卵管へ向かってやってきた精子のうち1個だけが、その卵子と出会うことができます(受精)。受精した卵子(受精卵)は、細胞分裂を繰り返しながら卵管を通り、排卵後4~5日後で子宮に到達。子宮内膜の中に侵入して着床し、妊娠成立となります。
以上が自然な妊娠の形になりますが、実際には何らかの要因で妊娠しないこともあります。妊娠を望む健康な男女が避妊をせずに性交をしているにも関わらず、1年以上妊娠しないことを「不妊」と言います。不妊には女性に原因があるものと男性に原因があるもの、また特に原因がない場合もあります。特に女性に排卵がなかったり、子宮内膜症を合併している場合は、1年を待たず早めに検査や治療に踏み切った方がよいでしょう。
検査で不妊の原因が特定できた場合は優先して治療します。治療の効果がない場合や原因が分からない場合には不妊治療を行います。まずは一般不妊治療から始め、その後、生殖補助医療(ART)に移行するのが基本ですが、患者の年齢や状況によってはすぐに体外受精を促す場合もあります。近年、男女共通の不妊の原因として多いのが加齢による影響です。早めの妊娠が不妊症解決の近道になることを覚えておきましょう。

妊娠と不妊治療-近年の動向

総出生児数が減少しているのに反して、不妊治療による出生児数は年々増加しています。なかでもART(生殖補助医療)における体外受精、顕微授精での出生率が高くなっています。

妊娠と不妊治療
不妊治療の一つである体外受精と顕微授精による出生児数の推移を表したもの。総出生児数に占める生殖補助医療出生児の割合は平成18年の1.79%から平成26年には4.71%へと増加している。

◎厚生労働省政策統括官付政策評価官室アフターサービス推進室の報告を元に弊社にて作成
※生殖補助医療出生児数は、新鮮胚(卵)を用いた治療数、凍結胚(卵)を用いた治療数及び顕微授精を用いた治療数の合計(日本産婦人科学会の集計による)
※総出生児数は厚生労働省人口動態統計による

妊娠と不妊治療-注意した方がよい人

月経の周期が早すぎる人(25日未満)または、遅すぎる人(35日以上)は不妊になりやすい傾向があります。また、年齢が35歳を超えている人は症状が何もなくても、妊娠しづらくなっていることを認識しておきましょう。

妊娠と不妊治療-出やすい症状

月経不順や無月経の人は不妊になる傾向が高いですが、何も症状がなくても不妊になる場合もあります。

妊娠と不妊治療-病名と症状

若い女性に多くみられる排卵障害を引き起こす病気
多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)

卵巣の中に卵胞が隙間なく詰まることで、排卵ができない状態になる病気を多嚢胞性卵巣(PCO)と言います。その一歩手前の段階であるPCOSは、卵胞がネックレスを並べたような状態になり、排卵障害が起こる病気。特に若い女性に多くみられ、生理周期が長いのが特徴です。排卵誘発剤(クロミッドやHMG注射)で排卵を促す治療を行います。

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急激なダイエットによって無排卵になる病気
体重減少性無月経

急激なダイエットにより頭の下垂体機能が働くなり、その結果卵巣も機能しなくなる病気。一度無月経に陥ると元の体に戻すことは難しく、結果自然妊娠はなかなか望めません。無理なダイエットはしないこと、2か月以上月経がこない場合は早めに医療機関を受診することが大切です。

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月経痛がひどい人は要注意!
子宮内膜症

本来子宮内腔にしか存在しない子宮内膜組織が卵巣の中や子宮の外、子宮の筋層など異所性に存在し、癒着や増殖を繰り返す病気。その結果、チョコレート嚢胞や卵管閉塞を引き起こし、不妊の原因となります。若い方にも多く、20歳頃から罹る人もいます。根治が難しい病気ですが、治療で改善することはできます。

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妊娠と不妊治療-治療法

不妊だと判断された場合、原因が分かっている場合はその治療を最優先に行います。特に原因がない場合は、一般不妊治療からスタートします。毎日基礎体温を計り、排卵日を予測して性交のタイミングを指導する「タイミング療法」や、精子を子宮内に注入して、より受精現場に近づけて妊娠率を上げようとする「人工授精」などがこれに当たります。
それでも妊娠しない場合は、生殖補助医療(ART)へ移行します。「体外受精」では、体内より取り出した卵子と精子をシャーレ内で受精させ、その受精卵を一定期間培養し、一定の発育を確認した胚(受精卵)を子宮に戻します。また、「顕微受精」は、体外受精と流れは同じですが、受精も補助します。採取した卵子に細い針を用いて精子を注入し、受精させ、それを子宮に戻します。また、胚(受精卵)を凍結して保存しておくこともできます。
一般治療での妊娠率は5~10%なのに対し、体外受精の妊娠率は30%と格段に高くなっています。そのため、患者の年齢や状況を考えて、一般不妊治療を行わず、すぐに体外受精に移る場合もあります。
ただし、体外受精をはじめとする生殖補助医療(ART)は保険適用外の診療となり、患者の実費負担となります。金銭的、精神的、身体的な面も考え、最終的には患者が判断することになります。

妊娠と不妊治療今すぐはじめる 予防と対策

□月経周期が不順な人は、早めに産婦人科を受診しましょう。
□月経痛や性交痛などの痛みがひどい場合は産婦人科を受診しましょう。
□短期間での急激なダイエットはやめましょう。
□なるべく若いうちに結婚・妊娠・出産のライフプランを計画しましょう。

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