熱中症問題

日頃からの対策と予防が大切!
熱中症(Heat stroke)

Medical.T 編集部 M.Hioki

  • 熱中症の原因は、環境・からだ・行動によるものが考えられる
  • 体温の調節機能がうまく働かず、体内に熱がこもってしまう病気
  • 熱中症の症状は、重症度I~III度の3段階に分類される
  • 熱中症は予防できる
  • 全国各地の「暑さ指数」を確認して、その日の予防に繋げる
  • 熱中症は、早期発見が大切
  • 症状に合わせた応急処置をする

熱中症-基礎知識

熱中症を引き起こす条件は、「環境」「からだ」「行動」によるものが考えられます。熱中症は、気温が高い、湿度が高い、風が弱いなどの「環境」、高齢者や乳幼児、肥満傾向にある人、基礎疾患、体調不良などの「からだ」、長時間の屋外作業や運動・生活の状態、水分補給の仕方などの「行動」の3つの要因により、体温の調節機能がうまく働かず、体内に熱がこもってしまうことで起こります。対応が遅れると多臓器不全を起こし、ときには死に至るおそれもあります。しかし、熱中症を正しく知って、普段から注意・工夫することで、熱中症は予防することができます。
2015年までは、熱中症の症状として「熱失神(heat syncope)」「熱痙攣(heat cramps)」「熱疲労(heat exhaustion)」「熱射病(heat stroke)」と4つの分類にされていました。しかし、日本救急医学会が、世界初の診療ガイドライン「熱中症診療ガイドライン2015」を公表し、熱中症を一つの症候群としてとらえ、重症度をI~III度の3段階に分類し、診断基準を簡略化することで早期治療に繋がるようにしました。医療従事者だけでなく、一般の人にも分かりやすく活用できるように、症状に合わせた対応法で早期の治療を訴えています。
また、環境省では「環境省熱中症予防情報サイト」で、全国各地の熱中症の発生リスクを数値化した「暑さ指数」の情報提供を行い、熱中症の啓発と予防を呼びかけています。熱中症の発生には温度に加えて湿度が大きな影響をおよぼします。湿度が考慮された暑さ指数が良い指標となります。
※暑さ指数(WBGT:Wet Bulb Globe Temperature)とは、1954年にアメリカで提唱された熱中症を予防するための指数です。湿度・輻射熱・気温を考慮し、湿球温度・黒球温度・乾熱温度から計算されたリスク指標です

【日最高WBGTと熱中症患者発生率の関係】
【日最高WBGTと熱中症患者発生率の関係】
◎環境省「熱中症予防情報サイト」を参考に弊社にて作成

上図のグラフからも暑さ指数(WBGT)が28℃を超えると、熱中症患者が急増加します。

熱中症-近年の動向

【2013年~20019年の熱中症による救急搬送人員及び死亡者一覧】
【2013年~20019年の熱中症による救急搬送人員及び死亡者一覧】
◎総務省消防署「熱中症情報」を参考に弊社にて作成

気象条件や社会的背景などにより、近年、熱中症による死亡者数が増加しています。記録的な猛暑日が続いた2018年7月は、救急搬送者数が54,220人で、死亡者数が133人と過去最多となりました。今年5月は、各地で猛暑日が続き、5月の全国の最高気温を更新し、熱中症とみられる死亡者もでています。

【2019年の熱中症による救急搬送状況(週別推移)】
【2019年の熱中症による救急搬送状況(週別推移)】
◎総務省消防署「熱中症情報」を参考に弊社にて作成
【年齢区分別(構成比)】
【年齢区分別(構成比)】
◎総務省消防署「熱中症情報」を参考に弊社にて作成

ほぼ半分の割合が、65歳以上の高齢者となっています。

【発生場所別(構成比)】
【発生場所別(構成比)】
◎総務省消防署「熱中症情報」を参考に弊社にて作成

発生場所は、住居が最も多く、ほぼ30%を占めています。
熱中症には労作性熱中症と非労作性熱中症があります。
労作性熱中症は若年者のスポーツ、中壮年男性の屋外での労働により発症します。高温下での活動時間の制限、こまめな水分摂取と休憩が必要です。
非労作性熱中症は男女共に日常生活の中で発症します。高齢の方・独居・日常生活動作の低下・精神疾患や心疾患などの基礎疾患のある方は熱中症関連死の危険性が高いとされています。日常生活の中でゆっくりと進行し、気が付いた時(発見された時)にはすでに重症になっていることも多いので注意が必要です。

熱中症の症状

熱中症は症状により重症度Ⅰ~Ⅲに分類されます。
重症度I度は、めまいや立ちくらみ、顔のほてり、筋肉痛や足がつるなどの症状が現われます。現場での応急処置や見守りで対処できます。
重症度II度は、頭痛や吐き気、倦怠感、自分で動けない、水分補給ができない集中力や判断力の低下などの症状が現われます。医療機関での診察が必要となります。
重症度III度は、体温が高く皮膚が赤く乾いている呼びかけに反応しないなどの中枢神経症状やけいれん発作、臓器障害、凝固障害(重篤)などの症状で、入院加療や集中治療が必要となります。

また、年代別で疑うポイントをあげると、乳幼児は、顔がほてっている、だるそうにして動きたがらない、おしっこが出ていない、体が熱いなどの症状です。子どもは、頭の痛み、気持ち悪さ、くらくらするなどを訴えたり、のどが渇く、汗の量の状態などで注意できます。高齢者は同様な症状に加え、血圧が低い、皮膚が乾燥している、動きがにぶい、手足のしびれなどもあげられ、大人の場合でも、睡眠不足や下痢など体調不良時は、だるいと感じたら疑いましょう。

熱中症の原因

熱中症は、暑さや湿度によって、体温調節機能がうまく働かなくなり、体内に熱がこもることで、体内の水分量や塩分量のバランスが崩れたりすることが原因です。「環境」「からだ」「行動」の3つの要因によるものが考えられます。

熱中症の検査方法

基本的には、血の巡りなどの身体診察とバイタルサインの診断に加え、血液検査や尿検査が行われます。
病歴や症状より、熱中症であることが疑われる場合は、必ず深部体温(直腸温、膀胱温)の測定を行います。

熱中症の治療方法

熱中症の基本の治療は、体の熱がこもりにくい環境に避難したうえで、水分や電解質、糖分を摂取することです。患者さん本人が飲水できるようであれば、ゆっくりとこまめに水分を摂取してもらいます。自力での飲水が難しい場合は、水分を点滴で補充します。

熱中症の合併症

中枢神経障害、肝障害、腎障害、心筋障害、肺障害、血液凝固障害など全身の臓器に及びます。主な後遺障害は中枢神経障害と報告されています。

熱中症の応急処置

涼しい場所や影のある場所へ移動し、衣服をゆるめて安静に寝かせます。塩分を含む水分が飲めるようであれば、ゆっくりとこまめに摂取してもらいます。太い血管がある首の周りや脇の下、太もものつけ根などを冷やし、体内の熱を下げます。また、冷房をつけ、扇風機やうちわなどで風をあてて外からも体を冷やします。外出時は、濡れたタオルなどをのせて風をあてて冷やします。ぬるま湯の場合は涼しい風で、冷たい水の場合は温かい風をあてて冷やすのが良いようです。

【応急処置の体を冷やすポイント】
【応急処置の体を冷やすポイント】

熱中症の予防・対策方法

熱中症への対策で重要なのは、①予防、②早期発見・早期治療につきます。重症になるほど、治療が遅くなるほど臓器障害が生じ、そのために生命予後は悪くなります。助かっても後遺症が残ります。臓器障害が生じる前に、熱暑環境から離脱し、水分を補給することが何より大切です。
熱中症予防としては、日頃からの暑さ対策や塩分を含む水分補給、体調管理は基本ですが、暑さへの慣れも必要です。1日1回は汗をかく運動をし、徐々に暑さに体を慣れさせていきましょう。

熱中症のリスクチェック

□ 乳幼児や子ども
□ 65歳以上の高齢者
□ 基礎疾患がある
□ 肥満ぎみである
□ 屋外で労働している
□ 運動をする
□ 暑さに慣れていない

熱中症のセルフチェック

予防・対策はしっかりできていますか?

□ 暑さ対策の工夫をしている。
□ こまめに水分・塩分を補給している。
□ 吸水性、速乾性、通気性が良い衣服を着ている。
□ 栄養バランスのよい食事をとっている。
□ しっかりと睡眠をとるなど、体調管理は万全。
□ 日頃から軽い運動を心掛け、体力づくりをしている。

下記のような症状はありますか?

□ 顔色が悪い
□ めまい、立ちくらみがする
□ 平熱で発汗がある
□ 手足がしびれる

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