脳の病気

急な頭痛や吐き気は警告サイン!
くも膜下出血

監修・取材協力:医学博士、日本脳神経外科学会専門医、日本脳卒中学会専門医、日本脳神経血管内治療学会専門医
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医学博士、日本脳神経外科学会専門医、日本脳卒中学会専門医、日本脳神経血管内治療学会専門医 中島 利彦

Medical.T 編集部 M.Hioki

  • くも膜下出血は、動脈瘤が破裂して起こる。
  • 季節、年齢関係なく起きやすい。
  • 急な頭痛と吐き気を感じたら、脳の専門医のいる病院へ行く。
  • 脳卒中の中では、死亡率が一番高い。
  • 命が助かっても寝たきりや、障がいが残ることも多い。
  • MRI検査により脳動脈瘤を発見し、治療することで予防ができる。

くも膜下出血の基礎知識

くも膜下出血は、脳卒中の中では、最も死亡率の高い病気です。くも膜下出血は脳出血や脳梗塞に比べると比較的若い人に多く、働き盛りの人が、くも膜下出血になって、後遺症が残ったり、命を落としたりと、生命の危機に繋がる危険な病気です。出血が起こると、頭痛と吐き気を感じるので、急な頭痛と吐き気には要注意です!すぐ脳の専門医のいる病院を受診しましょう。

くも膜下出血の近年の動向

近年、世界的には高血圧と喫煙対策などで、くも膜下出血の発症率が減少傾向を示していますが、日本ではくも膜下出血が増加傾向にあるようです(人口の高齢化が原因と考えられます)。
脳動脈瘤の破裂によって発生するくも膜下出血は、脳卒中全体の5%を占めるに留まっていますが、死亡率と合併症の発生率が高く、患者の半数は55歳未満であり、3分の1が発症日から数週間以内に死亡しています。生存者にも長期にわたって障害をかかえている人が少なくありません。

くも膜下出血の症状

突然、頭痛と吐き気が起こります。出血の程度が軽ければ、治療により後遺症を残さずに治りますが、出血がひどい場合は後遺症が残ったり、命を落とすことになります。

くも膜下出血の検査方法

症状や診察により、くも膜下出血を疑った場合は、すぐに頭部CT検査を行い、診断します。くも膜下出血と診断がついたら、手術に向けた検査をして、破裂した脳動脈瘤の場所や、大きさ、形状などを把握します。

くも膜下出血の原因

大部分のくも膜下出血は、脳動脈瘤という脳の血管の病気が原因でおこります。脳の血管にできた動脈瘤という瘤(こぶ)のように膨らんだ部分が破裂して、脳の表面に出血が広がる病気です。

くも膜下出血の治療方法

治療方法は、出血量や脳動脈瘤の場所により、さまざまありますが、くも膜下出血は極めて危険な病気なので、再出血を防止するための緊急手術と集中治療が必要となります。緊急手術には「ネッククリッピング術(開頭手術)」や「コイル塞栓術(血管内手術)」があります。
ネッククリッピング術は、全身麻酔下で頭蓋を開け、動脈瘤の頚部(ネック)を金属製のクリップで挟んで、動脈瘤に血液が行かなくなるようにします。手術は発症から72時間以内に行うのが原則となります。
コイル塞栓術は、血管造影と同じように足のつけねの動脈から、カテーテルを脳動脈瘤の中まで入れ、金属コイル(プラチナの細いコイル)で動脈瘤をパックして、動脈瘤に血液が行かないようにする方法です。動脈にカテーテルを入れるだけなので、患者さんへの負担が少なくなります。直接手術が難しい場所の脳動脈瘤や重症者、高齢者の場合などに行われます。

くも膜下出血の合併症

くも膜下出血のあと、1~2週間で脳の血管が縮んで(脳血管れん縮)、脳の血流が悪くなって、脳梗塞を起こすことがあります。また、その後しばらくして脳の周りにある脳脊髄液の流れが悪くなって、脳室という脳の中心にある空洞に脳脊髄液がたまってしまう、正常圧水頭症になることがあります。

くも膜下出血の予防・対策方法

MRI検査で、脳の血管に脳動脈瘤があるかどうかを調べます。MRIを使った脳ドックが、くも膜下出血予防のためには最も有効な方法です。出血する前に、脳動脈瘤を発見して、くも膜下出血になる前に治療すれば、出血を未然に防ぐことができます。

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