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食品からの感染に要注意!
夏に気をつけたい食中毒

監修・取材協力:磯村医院 院長
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磯村 豊司

Medical.T 編集部 M.Imase

高温多湿な気候となる梅雨から9月頃にかけては、細菌がもたらす食中毒に注意が必要です。食事の準備をする際には食材を十分加熱する手や調理器具をよく洗うなどして、食中毒を防ぎましょう。

夏に気をつけたい食中毒-基礎知識

食中毒は、ウイルス性、細菌性、自然毒(植物性・動物性)、化学物質、寄生虫など多種の原因から起こりますが、なかでも大多数を占めるのが細菌とウイルスが原因の食中毒です。
高温多湿な梅雨から夏にかけてはO-157、サルモネラ、カンピロバクター、黄色ブドウ球菌など細菌性の食中毒が多く発症しています。
感染原因によって症状は異なりますが、主には、腹痛や下痢、嘔吐、発熱などの症状が数日から2週間程度続きます。

細菌による感染症の多くは、抗生物質を投与することで症状を抑えることができます。ただし、薬を服用することにより、体内で増殖した細菌やウイルスが排出されず、腸内で長期間留まることになり、症状が長期化する場合もあります。自己判断で、下痢止めや吐き気止めなどの薬を安易に服用するのはやめましょう。

【原因物質別食中毒患者数推移(平成30年)】
【原因物質別食中毒患者数推移(平成30年)】
◎厚生労働省「食中毒統計資料」を参考に弊社にて作成

ウイルスが原因の食中毒が秋から春にかけて増えるのに対し、細菌が原因の食中毒は6月~9月に多く発生していることが分かる。

夏に気をつけたい食中毒-近年の動向

食中毒と言えば夏に多いイメージですが、近年では冬場の食中毒も多く発生しています。特に、感染力の強いノロウイルスには年中通しての注意が必要です。

【病因物質別食中毒患者数(平成30年)】
【病因物質別食中毒患者数(平成30年)】
◎厚生労働省「食中毒統計資料」を参考に弊社にて作成
 患者数の多かった物質を厳選してグラフ化しています

厚生労働省の病因物質別月別食中毒発生状況報告書によると、最も食中毒患者数が多かったのは3月、12月でいずれもノロウイルスの発症数が多くなっています。次いで、9月にはウェルシュ菌、8月は腸管出血性大腸菌の発症患者数が多くなっています。原因となる物質によって注意すべき発生時期が異なるため、食中毒には年間を通して注意した方がよいと言えるでしょう。

夏に気をつけたい食中毒-注意した方がよい人

□免疫が低下した高齢者
□乳幼児

夏に気をつけたい食中毒-出やすい症状

主な症状としては腹痛、下痢、嘔吐、発熱などですが、原因によって発症する症状も様々です。

夏に気をつけたい食中毒-考えられる病気

鶏肉や卵に要注意
サルモネラ

汚染を受けた食品の摂取により起こる細菌性食中毒の一つです。原因食品には、鶏卵またはその加工品、鶏肉、うなぎやスッポンなどが挙げられます。また、ネズミやペット動物を介して食品が汚染される場合もあります。潜伏時間は6時間から72時間で、腹痛、下痢、嘔吐、発熱などが主な症状です。

症状・原因・治療と予防法など詳しく読む

十分な加熱で食中毒を予防!
カンピロバクター

家畜をはじめペットや野鳥などあらゆる動物がもっている細菌。食中毒の原因菌として有名で、乾燥にとても弱く、通常の加熱処理で死滅します。潜伏期何は1日~7日で、下痢、血便、腹痛、37~38℃の発熱、頭痛、吐き気などの症状が出ます

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加工食品や水耕野菜に注意
腸管出血性大腸菌ちょうかんしゅっけつせいだいちょうきん(O-157)

腸管出血性大腸菌O-157は、牛などの家畜が保菌している場合があり、これらの糞便に汚染された食肉からの二次汚染により、あらゆる食品が原因となる可能性があります。潜伏期間は3日~8日と長く、下痢や腹痛、激しい腹痛や血便を伴う下痢などが主な症状です。

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人の皮膚の傷口などに繁殖
黄色ブドウ球菌

健康な人でものどや鼻の中などに高確率で検出される、身近な細菌。食べ物の中で増殖するときに毒素をつくり、その毒素と食品を一緒に食べることで食中毒を引き起こします。潜伏期間は1時間~3時間、激しい吐き気や嘔吐、下痢、腹痛などを伴います。

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魚介類に寄生する寄生虫
アニサキス症

寄生虫の一種で、サバ、アジ、サンマ、カツオ、イワシ、サケ、イカなどの魚介類に寄生します。症例の多くは、食後数時間から十数時間後に強い上腹部の痛み、嘔気、嘔吐などの症状が出る急性胃アニサキス症です。

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夏に気をつけたい食中毒-治療方法

医療機関では、血管内脱水を防ぐための点滴治療が行われます。さらに、細菌性食中毒の場合は抗生剤治療、ウイルス性食中毒は対処療法+ポイックウォーター(次亜塩素酸水)を使用します。
家庭では、ぬるま湯や半分程度に薄めたスポーツドリンクなどを少しずつ飲み、脱水を防ぎます。食中毒かなと思ったら、なるべく早く医療機関を受診しまょう。

夏に気をつけたい食中毒今すぐはじめる 予防と対策

  • 細菌をつけない・持ち込まない

    生の肉や魚、卵などを扱う前後、残った食品を扱う前には手を洗いましょう。

  • 細菌を増やさない

    食べ物は低温保存が基本です。肉や魚、お惣菜などは購入後なるべく早く冷蔵庫に入れましょう。冷蔵庫に入れた食べ物も早めに食べましょう。

  • 細菌を殺す

    ほとんどの細菌やウイルスは加熱によって死滅します。肉やレバーなどの内臓はよく加熱して食べましょう。(一部死滅しない細菌・ウイルスも有り)
    ふきん、まな板、包丁などの調理器具は洗剤で洗った後、熱湯殺菌しましょう。

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