心臓の病気

心臓の病気の行く末
心不全

監修・取材協力:岐阜ハートセンター院長
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医学博士 松尾 仁司先生

Medical.T 編集部 A.Ito

  • 心臓の働きが低下し、機能ができなくなる病気です。
  • 4つのステージに分けられて、ステージが進むほど身体機能が低下します。
  • 治療が困難になる前に、原因となる心疾患の治療を始めるのが重要です。
  • 減塩、水分量、運動など、家庭での過ごし方も治療につながります。

心不全の基礎知識

心臓の役割がうまく機能できなくなっている状態です。原因はさまざまあり、あらゆる心臓の病気から心不全になる可能性があります。心筋梗塞や突然発症した不整脈などが急性心不全で、心筋症高血圧弁膜症などが原因で長年にわたって心不全症状を認める場合を慢性心不全といいます。症状もさまざまで、平地歩行やちょっとした動作で動悸や息切れが起きたり、せきやたんが止まらない、むくみが出るなどの症状もあります。
2018年に公表された「急性・慢性心不全診療ガイドライン」では、心不全の進行状態を4ステージに分けています。

ステージA
心不全の危険因子がある段階。
高血圧、糖尿病、動脈硬化がみられます。
心不全の症状は現れません。

ステージB
心臓の働きに異常が現れてきた段階。
虚血性心疾患(心筋梗塞、狭心症)、心肥大、弁膜症、心筋症、不整脈などがみられます。
放置をしていると心不全の症状が現れます。

ステージC
心不全が発症している段階です。心不全と診断された人はステージCということになります。

ステージD
治療が難しくなる段階です。

【心不全とそのリスクの進展ステージ】
【心不全とそのリスクの進展ステージ】

心不全の動向

治療をすることでいったんは改善しますが、その後、悪化することもあり、入退院を繰り返す人も多くいるため、心不全にフォーカスを当てた細かな管理が必要と考えられるようになっています。
再入院の要因には、食事や運動などの日常生活に関わることが多く含まれており、自分の病気について知ることと自己管理が大切になります。手術や正しい薬の服用はもちろん、日常生活の送り方にも注意が必要です。
そのため、病院内で外科医、内科医、薬剤師、看護師、管理栄養士、心臓リハビリテーションスタッフといった分野のことなるメンバーでチームを組み、患者をサポートする取り組みも行なわれています。
また、2018年の新しい「急性・慢性心不全診療ガイドライン」では、心不全を急性と慢性に分けず、一つにまとめられ、急性心不全は慢性心不全の急性的なものだとされています。

心不全の症状

労作時の息切れ。
疲れやすくなる。
咳や段痰が止まらない。
横になった時に呼吸困難になる。
夜間に発作性の呼吸困難が起きる。
足や顔にむくみが出る。
などが挙げられます。

心不全の原因

心臓の病気と高血圧が主な原因です。心臓の病気としては具体的に、狭心症心筋梗塞心筋症心臓弁膜症が挙げられます。
冠動脈疾患(心臓に栄養が行き渡らなくなる病気)も原因の一つです。
高血圧の人の場合は、血管の壁に常に高い圧力がかかるため、血管の壁が厚く、硬くなってしまいます。こうなると、心臓が強い力で血液を押出さなければならないので、心臓の筋肉も厚くなり、血液が流れにくくなって心不全へと移行することが考えられています。

心不全の検査方法

心不全の診断は主に次の検査が行われます。
●心電図
心臓の筋肉の暑さや心臓の異常の有無などを調べます。
●胸部X線
心臓の形や大きさ、肺の状態を調べます。
●心臓超音波(心エコー)
心臓の拡張と収縮の状態を調べます。
●血液検査
心不全の重症度を表すBNP値、またはNT-proBNP値を測定します。
(NT-proBNP値が400pg/mL以上またはBNP値が100pg/mL以上ある場合は注意)

その他、CT、MRI、核医学検査、運動/薬剤負荷試験、心臓カテーテル検査を行い、原因疾患や心不全ステージに応じた治療をしていきます。

心不全の治療方法

それぞれの心疾患の治療に加え、基本は生活習慣の改善と薬物療法、運動療法を行います。喫煙飲酒食事の塩分量に気をつけます。病院の治療としては、虚血を解除することで心機能を改善しますが、重症度に基づいて治療方針を考えます。

●冠動脈形成術(PCI)
心筋梗塞を経験した人には、重篤な心不全にならないように、PCIが行われる場合もあります。カテーテルを使ってバルーンで血管を拡げステントを挿入して血液の流れを確保する治療法です。

●経カテーテル大動脈弁置換術(TAVI)
大動脈弁狭窄症の手術として行います。

心不全の合併症

不整脈をはじめ、そのほかの心疾患を併発することがあります。

心不全の自宅療法(療養方法、再発防止など)

●正しい薬の服用。
飲む時間や量だけではなく、作用や副作用についても知流ことが大切です。
●心臓に過度な負担をかけない運動
心不全で体を動かすことが困難になりますが、運動をしないとさらに筋力が低下し、日常生活を送ることが難しくなります。体を動かすことで、薬の効果も高まります。
●塩分や水分の制限。
コーヒーや果物も水分摂取につながるので気をつけましょう。

心不全の予防・対策方法

4つのステージのうち、ステージAとステージBは心不全予備軍と考えることができます。そのため、ステージAでの高血圧、糖尿病、動脈硬化などの危険因子の治療を行うことが予防につながります。
ステージBでは心筋梗塞、弁膜症、心筋症、不整脈などさまざまな心臓病を発症している場合があるので、これらの病気の異常に気がつき、治療を始めます。

心不全のセルフチェック

□ 心臓の機能、自分の心臓の状態について知る
□ 正確な服薬をする
□ 減塩を守る
□ 適切に水分量をとる
□ 適切に栄養をとる
□ 感染予防をする
□ 適度な運動をする
□ 定期検診を受ける

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