夏の健康トラブル

山へ行く際には服装などで注意
蛇咬創・虫刺傷へびこうそう・ちゅうししょう

監修・取材協力:日本赤十字社岐阜県支部
赤十字救急法指導員
猿渡 達彦プロフィールへ

赤十字救急法指導員 猿渡 達彦

Medical.T 編集部 M.Imase

  • 毒ヘビに咬まれた場合、適切な応急処置をしないと死に至る場合もあります。
  • 毒ヘビに咬まれたら、傷口を石鹸で洗い、包帯を巻いて医療機関を受診します。
  • 毒バチに刺されたら針を根元から抜くか払って落とし、冷湿布をします。
  • ハチ毒アレルギーによるアナフィラキシーショックを起こすと、死に至る場合もあります。
  • 山や草むらへ行く際は衣類や帽子で肌や髪を覆い、においのつよい化粧品などは避けます。

蛇咬創・虫刺傷-基礎知識

野外キャンプや海水浴、ダイビングなどで毒ヘビや毒のある虫に刺されることがあります。刺されて事故が起こるものとして、マムシ、ハブ、ヤマカガシ、ハチ(スズメバチ、アシナガバチ)、蚊、マダニ、ゴケグモなどがあります。
毒ヘビの場合は急いで適切な処置をしないと死に至る危険もあるため、速やかに医療機関に搬送してください。また、ハチに刺されたときは応急処置の後に医療機関を受診しますが、ハチ毒のアレルギーを持つ人の場合、アナフィラキシーショックを起こし死に至る場合もあります。

蛇咬創・虫刺傷の症状

【毒ヘビ】
マムシやハブに噛まれると10分前後で傷口が腫れてきます。痛みが起こり、適切な応急処置をしないと全身状態が悪くなり、死に至る危険があります。ヤマカガシに噛まれると、数時間後に傷口から出血し、歯茎や皮下、内臓、粘膜などからも出血してきます。毒液が直接目に入ると失明することもあります。

【毒虫】
① ハチ(スズメバチ・アシナガバチ)
ハチに刺されると痛みと腫れが起こり、ハチ毒に過敏な人は一匹に刺されてもショック状態(アナフィラキシーショック)になったり、呼吸停止を起こし死亡することもあります。

② 蚊
一般的には特に大きな被害はありませんが、デング熱など、蚊が媒介する感染症があります。デング熱突然の発熱で発症し、頭痛・目の充血などを伴い、その後、筋肉痛や関節痛、発疹が現れます。重症化すると出血やショック症状になることもあります。

③ マダニ
マダニはウイルスを媒介する場合があり、代表的なものにSFTSウイルス(Severe fever with thrombocytopenia syndrome virus)があります。感染すると重症熱性血小板減少症候群(SFTS)を発症しますので注意が必要です。SFTSの症状としては、発熱、嘔吐、下痢、頭痛、筋肉痛のほか、意識障害になる場合もあります。

④ ゴケグモ
ゴケグモ(代表的なものはセアカゴケグモ)は、毒性が強いため注意が必要です。噛まれると腫れや激しい痛み、体の硬直、激しい腹痛、嘔吐、発熱、悪寒などがあります。

特に注意したい毒ヘビ・毒バチ

蛇咬創・虫刺傷の原因

ヘビを捕まえたり、近寄ったり、また、ハチの巣を刺激したり、飛んでいるハチを追いかけまわしたりすると敵だとみなされ攻撃されるリスクが高まります。

蛇咬創・虫刺傷の応急処置

【毒蛇】
どんな小さな傷でも石鹸を使って水でよく洗い、清潔なガーゼを当てて包帯をします。安静にし、手足を曲げ伸ばしたり、走ったりしないようにしましょう。ヤマカガシなどの毒液が目に入ったときにはすぐに水で洗い流します(ただし水で洗っただけでは毒は取り除けません)。脱水症状を起こさないよう水分を取り、急いで医療機関に搬送します。毒ヘビの場合、血清の投与など適切な治療をしないと死に至る危険があります。

【毒虫】
① ハチ
針が残っているものは根元から毛抜きで抜くか、横に払って落とします。針をつかむと針の中の毒がさらに注入することがあるのでやめましょう。その後、冷湿布をして冷やし、医師の診察を受けます。蜂に一度刺されたことのある人が、2回目、3回目に刺された場合、アナフィラキシーショックを起こす可能性があります。早めに医療機関を受診してください。

② 蚊(デング熱)
突然の発熱などデング熱の症状が出たら、脱水症状にならないよう水分補給をし、医療機関を受診します。人から人への感染は確認されていないので、落ち着いて行動しましょう。

③ マダニ(SFTS)
マダニに刺されたり、感染症を発症した場合は医療機関を受診しましょう。マダニに刺されたら無理に引き抜いたり、力づくでとらないようにします。引き抜いたり、取ったりすることでマダニの口先が傷口の内部に残る場合があります。

④ ゴケグモ
初期には冷やすと痛みが軽減します。冷やしながら医療機関へ向かいましょう。

蛇咬創・虫刺傷の検査方法

加害生物である蛇や虫を目撃している場合はその様子や、牙痕や刺された痕、症状などにより診断し、血液検査などを行います。

蛇咬創・虫刺傷の自宅療法(療養方法、再発防止など)

安静にして経過をみましょう。

蛇咬創・虫刺傷の予防・対策方法

蛇は湿った陽の当らない場所を好みます。野外活動やキャンプなどの際には、倒れた枯れ木や岩かげ、川や沼に近い草むら、じめじめしたところなどにはなるべく近寄らないようにしましょう。また、長ズボン、長袖、厚手の靴下、手袋などを着け、肌を露出しないようにしてください。
害虫は駆除した方がよいですが、ハチなどは不用意に攻撃したり、巣をたたいたりしてはいけません。ハチは黒いものを敵だと思って攻撃してくる習性があるので、黒っぽい色の服を避け、帽子を被りましょう。においの強い化粧品なども刺激を与えてしまうため避けてください。

蛇咬創・虫刺傷のリスクチェック

□ 山や草むら、沼や川に近い湿地などに行くことがある
□ 自然の中で仕事をしている
□ 自然遊びが好き

蛇咬創・虫刺傷のセルフチェック

予防・対策はしっかりできていますか?

□ 衣類などで肌を覆っている
□ 黒っぽい色の服を避け、帽子を被っている
□ においの強い化粧品は避けている
□ 虫よけスプレーを使用している
□ 倒れた枯れ木や岩陰、川や沼に近い草むらなどには近づかない

出典:赤十字救急法講習教本(14版)

関連TOPICS