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猛暑対策と正しい知識で未然に防ごう!
熱中症

Medical.T 編集部 M.Hioki

年々、増え続けている熱中症問題。昨年の夏は、西日本と東日本で記録的な猛暑日(最高気温35度以上)が続き、災害レベルの酷暑とも言われていました。今年は5月26日に北海道で39.5度を記録し、各地で今年初の猛暑日が観測され、熱中症の疑いで死亡者も出ています。気象庁によると、今年の夏は7月初め現在では、冷夏の予想はまだ出ていませんが、エルニーニョの影響により冷夏の傾向が強いようです。昨年のような猛暑日は少ないようですが、早めの対策と予防で、熱中症を防ぎましょう!

夏は常に熱中症のリスクを考え、猛暑日は万全の対策を!

熱中症-基礎知識

暑さと湿度が引き起こす熱中症。熱中症は体温の調節機能がうまく働かず、体内に熱がこもってしまうことで起こり、対応が遅れると多臓器不全を起こし、ときには死に至るおそれもあります。特に猛暑日に発生しやすく、年齢や体調、水分補給の仕方、環境、運動や生活の状態、暑さへの慣れ、持病など、いろいろな要素が絡み、屋内の日常活動でも発症する可能性があるので注意が必要です。しかし、熱中症を正しく知って、普段から気を付けることで、暑い夏も熱中症にかからず、乗り切ることができます。
環境省では、「環境省熱中症予防情報サイト」で、全国各地の熱中症の発生リスクを数値化した「暑さ指数」の情報提供を行って、熱中症の啓発と予防をびかけています。また、日本救急医学会では「熱中症診療ガイドライン2015」で、一般の人にも症状と対処法がわかりやすいように重症度を分類し、早期の治療を訴えています
基本的に熱中症を防ぐには、暑さを避け、塩分を含む水分補給を行うことが大切です。特に猛暑日の夜は、あまり暑さを感じなくても冷房を入れ、部屋全体の温度を下げておくことで熱中症予防を予防できます。日中の暑さで熱を持った外壁が夜中に放熱して室内の気温が上がり、寝ている間に熱中症になってしまうことが多いようです。また、地面の照り返しにさらされやすく体温調整機能が未熟な子ども、基礎疾患のある人、体温調節が鈍くなりがちな65歳以上の高齢者は、特に重症の熱中症にかかりやすいため、周囲の人たちの見守りも必要です。
熱中症にならないために日頃から予防と対策を行い、正しい対処法を覚え、熱中症を疑った場合には、早めに対処しましょう。

熱中症-近年の動向

近年、熱中症による死亡者数は増加傾向にあります。その原因としては、気象条件や社会的背景などが考えられています。
地球の温暖化や急速なヒートアイランド現象により、真夏日や猛暑日、熱帯夜などが続き、日本の夏は以前より確実に暑くなっています。また、熱中症の発見が遅れやすいひとり暮らしや、高齢者などが増え、いわゆる熱中症弱者の層が増加したことも死亡者数の増加につながっていると言われています。

熱中症-注意した方がよい人

□65歳以上の高齢者
□乳幼児や子ども
□基礎疾患のある人
□屋外で働く人
□運動する人
□睡眠不足など、体調不良の人

熱中症-出やすい症状

熱中症が起こりやすい気象条件は、30度以上で気温が高く、湿度が60~70%以上などの真夏日や猛暑日。日差しが強く、地面や建物からの照り返しが強い。風があまり無いなどの環境。急に気温が上昇した日や熱帯夜などです。
初期症状としては、乳幼児の場合は、熱っぽくグズって泣き止まないなど、ベビーカーやチャイルドシートに乗せている時は特に要注意。めまいや立ちくらみ、生あくび、体がだるいなどの症状がでたら、体を冷やして休みましょう。

熱中症-重症度と症状

生あくびや立ちくらみ、気分が悪くなったら
「熱中症 重症度 Ⅰ度(応急処置と見守り)」
めまいや立ちくらみ、生あくび、大量の発汗、筋肉痛、筋肉の硬直(こむら帰り)、気分が悪いなどの症状が現われます。意識障害は認めません(意識清明)。

「熱中症 重症度 Ⅱ度(様子を見て医療機関へ)」
頭痛、嘔吐、倦怠感、虚脱感、集中力や判断力の低下(だいたい清明であるが今一つはっきりしない)などの症状が現われます。
Ⅱ度の症状が認められる場合、Ⅰ度に改善が見られない場合はすぐに病院へ搬送します(周囲の人が判断)。

意識障害やけいれん、異常に体が熱い場合は
「熱中症 重症度 Ⅲ度(すぐ119番をして入院加療)」
下記の3つのうちいずれかを含む症状が現われます。
1.中枢神経症状(場所や時間、日付がわからないなどの見当識障害がある)、小脳症状、けいれん発作、体が熱いなど
2.肝臓・腎臓の機能障害(入院経過観察、入院加療が必要な程度の肝臓または腎臓障害)
3.血液凝固異常(急性期DIC診断基準[日本救急医学会]にてDICと診断)。Ⅲ度の中でも重症型
※DICは、血液を固める凝固作用と固まった血液を溶かす作用が同時に無秩序に起こる、極めて治療の難しい病態の一つ
Ⅲ度か否かは救急隊員や病院到着後の診察・検査により診断されます。

【熱中症の重症度と症状・治療】
【熱中症の重症度と症状・治療】
◎(公財)日本スポーツ協会「スポーツ活動中の熱中症予防ガイドブック」(2019)及び、日本生気象学会「日常生活における熱中症予防指針Ver.3」(2013)を参考に弊社にて作成

熱中症-治療方法

涼しい場所での休憩や応急処置により、その場で回復するもの、医療機関での処置や、入院、集中治療が必要など、重症度によって様々です。

重症度Ⅰ度は、通常では現場で対応可能であり、冷所での安静、体表冷却をし、経口的に水分と塩分の補給をするなどします。

重症度Ⅱ度は、医療機関での診察が必要になります。体温管理をし、安静、十分な水分と塩分の補給(経口摂取が困難な時には点滴にて)をします。

重症度Ⅲ度は、入院加療(場合により集中治療)が必要となります。体温管理をし、体表冷却に加え体内冷却、血管内冷却などの追加もし、呼吸・循環管理も行います。さらに、血液凝固異常が認められた場合は、集中治療が必要となり、DIC治療をします。

【暑さ指数と活動の目安】
【暑さ指数と活動の目安】
◎(公財)日本スポーツ協会「スポーツ活動中の熱中症予防ガイドブック」(2019)及び、日本生気象学会「日常生活における熱中症予防指針Ver.3」(2013)を参考に弊社にて作成 ※暑さ指数とは気温・湿度・日射輻射・風速より計算されたリスク指標
【熱中症による救急搬送者数】
【熱中症による救急搬送者数】
◎環境省「熱中症環境保健マニュアル」を参考に弊社にて作成
症状・原因・治療と予防法など詳しく読む

熱中症今すぐはじめる 予防と対策

  • 子どもや高齢者は周囲が見守る。

  • こまめに水分・塩分を補給する。

  • 冷房器具などで室温を28度前後に調整する。

  • 環境省が公開の「暑さ指数」をチェックして、熱中症リスクを確認する。

  • 外出時は帽子や日傘などを使用し、日よけ対策をする。

  • 体を締め付けない涼しい服装で外出する。

  • 外出時は日陰・涼しい場所を利用し、暑さを避ける。

熱中症の応急処置『FIRST
  • Fluid
    水分・塩分をこまめに補給(意識が悪いときには119番)
  • Ice
    冷房をつけ、扇風機などで風をあて、首の周りや脇の下、太ももの付け根など太い血管を冷やす
    ※外出時は、濡れたタオルをかけて風をあて、体を冷やす
  • Rest
    日陰や涼しい場所に避難し、衣服を緩め安静に寝かせる
  • Sign
    15分~30分様子を見る
  • Treatment
    改善しなければ医療機関へ

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