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“休めば治る”と思い込んで放置しないで!
成長期のスポーツ障害

監修・取材協力:医療法人はなみずき 理事長
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西森康浩

Medical.T 編集部 M.Ito

過度なトレーニングによって慢性的な痛みなどの症状が出るスポーツ障害。特に、成長期の子どもの骨や筋肉はデリケート。休めば治ると思い込み放置すると、重症化してしまう場合があります。

成長期のスポーツ障害-基礎知識

急激に身長が伸び始める成長期は、骨の成長に周辺の筋肉の発達が追いつかず、筋肉が常に引っ張られた状態になっています。成長期のスポーツ障害は、このような骨と筋肉の成長のアンバランスから起こるものと、脆弱な部分に繰り返しのストレスをかけることで起こるものとがあります。
練習を休むだけでは根本的な改善にはなりません。休むことで一時的に症状が落ち着いたとしても、再開すれば再発してしまいます。適切な治療をしないと、重症化して選手生命にかかわる場合もあるため、痛みや違和感がある場合は、放置せず、早めに専門医に相談しましょう。

成長期のスポーツ障害-近年の動向

成長期の子どもの骨や筋肉がデリケートであるが故に、新型コロナウイルス感染症 (COVID-19)での外出自粛や休校による体力低下によって子どもの疲労骨折が増えています。部活で急に体を動かしたことだけでなく、今まで普通にやれていた体育などの運動で骨折してしまう事例が見られます。このような疲労骨折は不顕性骨折とも言い、一般的なレントゲンでは見落とされやすいため、レントゲンを撮って折れていないと診断された症例でもMRIを撮ると骨折が隠れていたということがあります。なかなか痛みが引かない場合は疲労骨折の可能性も考えられます。
夏から秋はスポーツに打ち込む中高生が増えます。膝周辺や足周辺に痛みが出る人が多いため、特に大腿四頭筋(太もも前面の筋肉)のストレッチを十分に行いましょう。一方で、新型コロナウイルス感染症 (COVID-19)によって外出ができない場合は自宅でもできるストレッチを取り入れるなど、ケガや疲労骨折、スポーツ障害を予防しながら、子どもたちが高いパフォーマンスを発揮できる環境を整えてあげましょう。

成長期のスポーツ障害-発生部位

ひと口に「成長期のスポーツ障害」と言っても、全身にこれだけの症状が起こり得ます。どの部位に痛みが出るかによって、障害を予測できます。レントンゲンだけでは見つからず、MRIやCTなど画像診断で分かる場合もあります。

成長期のスポーツ障害

成長期のスポーツ障害-考えられる主な障害

肩に痛みが出る
リトルリーガーズショルダー(骨端線離開)

投球動作を繰り返し行うことで骨端線という成長軟骨部が開き、肩に痛みが出るのがリトルリーガーズショルダー(骨端線離開)です。繰り返しのストレスが主な原因となるため、投球制限によって予防します。投球フォームの乱れが原因となっている場合もあるため、痛みが取れてから投球フォームの改善を行い、投球練習に入ります。無理をすると手術を要する大事になる病気でもあります。「投球すると肩が痛い」「肩の周辺に痛みや違和感がある」という方は投球を休止し、専門医に相談しましょう。

骨と筋肉の成長のアンバランスが原因
オスグッド病

オスグッド病は成長期の子どもたちを悩ませる膝の障害の一つで、すねの上のあたりに痛みが出ます。飛ぶ、跳ねる、ボールを蹴る動作の繰り返しで発生しやすくなります。診断はレントゲンによって行います。骨と筋肉の成長のアンバランスが原因となるため、予防のために大腿四頭筋を伸ばすストレッチをしっかりと行いましょう。また近年、足首が硬い子が増えています。かかとをつけたまま、しゃがみこめますか?足首が硬いと運動時に膝に負担がかかり、オスグッド病を発症しやすくなります。足首のストレッチも重要です。

小学校高学年~中学生の男の子に多い
シーバー病

かかとに痛みや腫れが出るシーバー病は、小学校高学年~中学生の男の子によく見られるスポーツ障害。運動による繰り返しのストレスが主な原因。踵骨骨端核がアキレス腱と足底筋膜によって引っ張られることで炎症が起こり、痛みを引き起こします。悪化すると痛くてかかとを地面に付けられず、つま先歩きになってしまいます。予防するために、アキレス腱や足首のストレッチなど、日頃からかかとへの負担を減らすケアを行いましょう。インソールを見直すのも効果的です。

椎弓にひびが入って2つに分離する
腰椎分離症

運動時に背中を反らすと腰が痛いなどの症状が現れる腰椎分離症。背中を反らす動作やジャンプ動作を繰り返し行うことで、腰椎に負荷がかかり、椎弓(腰椎の後方部分)にひびが入って2つに分離してしまう疾患です。痛いまま放置すると治りにくくなってしまうため、運動時や運動直後に腰に痛みや違和感がある場合は早めに専門医に相談しましょう。予防には、腹筋や背筋、大腿四頭筋のストレッチが効果的です。

成長期のスポーツ障害-治療方法

保存療法にて治療し、重症の場合は手術を行います。スポーツ障害は、発生部位や症状に加えて、スポーツの種類や活動レベル、年齢なども考慮した上で、最良な治療方針を検討していくのがベストです。あわせて、スポーツ障害の要因となっている可能性がある過度な練習量や乱れたフォーム、誤ったトレーニング法など、環境面を見直すことも重要になります。

成長期のスポーツ障害
予防

スポーツ障害の予防には、部位に合わせた十分なストレッチが効果的です。練習量やフォームの乱れ、準備運動不足、勝敗への強いこだわり、保護者の過度な期待など、子どもを取り巻く環境も大きく影響するため、周りの大人が正しい知識を身に付けることが大切です。

今すぐはじめる 予防と対策

□ スポーツの前は十分にストレッチを行いましょう
□ スポーツ後のアイシングや、お風呂から上がった時にほぐすなど体をケアしましょう
□ 練習の合間には休息を取り、体を休めましょう
□ 正しいフォームで行えているかどうか見直しましょう

成長期のスポーツ障害 リスクチェック

スポーツを頑張っている成長期のお子さんに、以下の様子は見られませんか?
□ 肩周辺、肘周辺、骨盤周辺、膝周辺、足周辺に痛みや違和感がある
□ 毎日部活がありハードな練習が続いている
□ ストレッチが不十分だと感じている
□ 非科学的トレーニングを行っている
□ 体に痛みがあっても休みづらい部活の雰囲気
□ 土踏まずがなくて偏平足である(シンスプリントの原因になりやすい)
□ 足首が硬いと言われる(オスグッド病の原因になりやすい)
□ 入部して間もない中学1年生・高校1年生
※中学1年生と中学3年生、高校1年生と高校3年生は体の出来上がりが違うにも関わらず部活内で同じトレーニングを行っている場合が多いです。新入部員は成長障害が起きやすいので注意が必要です。

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