冬の皮膚疾患

身近な暖房器具で起きる
低温熱傷(低温やけど)

監修・取材協力:ごきそ皮フ科クリニック 院長
日本皮膚科学会認定皮膚科専門医
日本レーザー医学会認定レーザー専門医
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蒲澤 ゆき

Medical.T 編集部 M.Ito

  • 44~50℃のものが長時間皮膚に触れることで起きるやけど
  • じわじわと進行するため、気付きにくく重症化しやすい
  • 皮膚が薄い子どもや高齢者は要注意

低温熱傷の基礎知識

低温熱傷は低温やけどとも呼ばれ、通常のやけどのように皮膚に高温の熱源が接触することによって起きるのではなく、人が心地よいと感じる44~50℃のものが長時間にわたって皮膚に触れることで起きるやけどのことを言います。湯たんぽやこたつ、使い捨てカイロ、電気毛布などを利用する冬は特に低温熱傷の危険度も増します。じわじわと皮膚の深い部分まで達するため、その時は痛みを感じにくく、重症化する傾向があります。特に皮膚が薄い子どもや高齢者は注意が必要です。

低温熱傷の近年の動向

エコブームにより湯たんぽの利用者が増え、低温熱傷を負う事故が増えています。ノートパソコンを膝の上に置いて長時間使用したことや、トイレの暖房便座に長時間使用したことが原因で低温熱傷を発症するケースも見られます。

低温熱傷の症状

初期の段階は少し患部が赤くヒリヒリする程度。しばらくすると、水ぶくれができてグジュグジュになり、痛みを感じるようになります。重症化すると皮膚が壊死する場合もあります。皮膚の奥深くで進行するため、通常のやけどよりも治りにくく、重症化するケースが多いと言われています。初期症状は見た目にはわかりにくく軽傷と勘違いされがち。暖房器具などを使用して皮膚に赤みや違和感がある場合は早めに皮膚科を受診しましょう。

低温熱傷の検査方法

視診により診断します。

低温熱傷の原因

一般的に、44℃の場合で3~4時間、46℃では30分~1時間、50℃では2~3分で低温熱傷を発症しやすいと言われています。
【低温熱傷を発症しやすい暖房器具】
●湯たんぽ
就寝時の使用は無意識に長時間接触してしまう可能性があり発症しやすい。翌朝かかとに水ぶくれができていたというケースも。
●こたつ
直接接触していなくても、皮膚と熱源の距離が近いと低温熱傷の原因となります。特に高齢者は感覚機能が低下しているため、やけどに気付かないという場合も少なくありません。
●使い捨てカイロ
長時間同じ場所を温め続けた場合や、貼るタイプのカイロを肌に直接貼ったり下着など薄い衣類に貼ったりした場合、カイロをあてた場所をガードルやサポーターなどで圧迫した場合に発症しやすい。

低温熱傷の治療方法

皮膚が赤くなったりヒリヒリした場合は、応急処置として流水や氷を入れた水袋で患部を冷却しましょう。ただし冷やし過ぎると凍傷になる場合もあるため注意が必要です。
やけどはその深さによってI度熱傷からIII度熱傷に分類されます。軽度の場合は塗り薬が処方されます。重度の場合は外科的治療が必要になるケースもあります。

低温熱傷の自宅療法(療養方法、再発防止など)

患部を清潔に保ち、処方された塗り薬を使用し経過を観察しましょう。

低温熱傷の予防・対策方法

暖房器具を体に直接あてたり、長時間あてたりしないことが予防となります。湯たんぽなどは専用袋やタオルで包み、さらに脇や足の間に挟む使い方は避けましょう。
暖房器具に触れたまま眠るのは大変危険です。湯たんぽは就寝前にあらかじめ布団へ入れておき、眠る前に布団から出しましょう。電気毛布も就寝前に温めておき、眠る前に電源を切るようにしましょう。こたつやストーブは、熱源から離れて使用するなど、使い方を注意するだけで低温熱傷の予防につながります。

低温熱傷のリスクチェック

□ 冬はカイロが手放せない
□ 就寝時に湯たんぽや電気毛布を使っている
□ 急いで温めようとこたつなどの熱源に手足をくっつけている
□ こたつや電気カーペットで寝ている
□ 子ども
□ 高齢者

低温熱傷のセルフチェック

予防・対策はしっかりできていますか?

□ 暖房器具は正しい使い方ができている
□ 湯たんぽや電気毛布は就寝時に使用しない
□ カイロを直接肌や下着に貼らない

下記のような症状はありますか?

□ 暖房器具に触れた場所が赤くなっている
□ 皮膚がヒリヒリする
□ 暖房器具を使用して水ぶくれができている

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