急性中毒

自分の適量や体調に合った飲み方を
急性アルコール中毒

監修・取材協力:岐阜県総合医療センター 救命救急センター長
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豊田泉

Medical.T 編集部 M.Hioki

  • 短時間に大量のアルコールを摂取することで発生する。
  • 急性アルコール中毒は脳を麻痺させるアルコールの毒性によって起こる。
  • 血中のアルコール濃度や飲酒量に比例し、誰でもが陥る急性中毒。
  • 意識混濁→運動失調→泥酔→昏睡→呼吸や心肺機能停止と、死亡の危険性もある。

急性アルコール中毒の基礎知識

お酒のイッキ飲みなど、短時間に大量のアルコールを摂取することによって起こる急性アルコール中毒。お酒に含まれるエチルアルコール(エタノール)を大量に摂取することで、血中アルコール濃度が上昇し、脳を麻痺させるアルコールの毒性によって起こります。危険なアルコール量を摂取することで、一気に脳へ麻痺が広がり、意識混濁、運動失調などの泥酔や昏睡状態に陥り、最悪の場合、呼吸や心肺機能を停止させ、死に至る危険性もあります。
アルコール代謝量は個人差も大きく、体調や環境によっても変わりますが、とにかく、血中アルコール濃度を急激に上げないことが大切です。命に関わるため「イッキ飲みはしない・させない」ようにしましょう。

急性アルコール中毒の近年の動向

◎東京消防庁資料より弊社にて作成

急性アルコール中毒においては、以前よりもイッキ飲みや無理な飲み方をする人が減ってはいるものの、救急搬送は増加傾向にあります。近年は、安易に救急車を呼ぶ人が増えたことで、救急搬送される人は増えていますが、症状は軽度であることが多いようです。

◎東京消防庁資料より弊社にて作成

急性アルコール中毒の症状

イッキ飲みをすると、酔っているという自覚なしに危険な量のアルコールを摂取することになり、一気に泥酔や昏睡状態になってしまいます。急性中毒の場合は、意識の混濁、強度の運動失調、昏睡、失禁などが起こり、体温の低下、呼吸の抑制などによって死亡の危険も出てきます。また、脱力、低血圧、起立性低血圧(急に立ち上がったりした時などに起こる脱力、失神)、アルコール性低血糖などの症状が起こる場合もあります。

急性アルコール中毒の検査方法

多くは問診や付き添いの人などから状況を確認します。その後、意識障害が強いなど、重症と判断すれば、血中アルコール濃度や栄養不足を調べる血液検査を行い、状態に応じて脳や臓器障害がないかを調べるために画像診断などを行います。

急性アルコール中毒の原因

お酒に含まれるエチルアルコール(エタノール)を、短時間のうちに大量摂取することが原因になります。大量摂取によって血中アルコール濃度が上昇し、アルコールの毒性によって中毒状態になります。お酒への体質ではなく、あくまでも血中のアルコール濃度や飲んだアルコールの量に比例し、誰でもが陥る急性中毒です。

急性アルコール中毒の治療方法

酩酊状態の度合いによって対処法はさまざまです。エタノールには解毒薬は無いため、対症療法としては、主に点滴や強制利尿を実施し、体外にエタノールを排出させる治療法を行うことが多いようです。また、重症の場合は、意識障害による窒息を防ぐために、気道確保を行い、ICUでの治療や入院が必要となることがあります。

急性アルコール中毒の予防・対策方法

1.自分の適量を知り、常にその日の体調にも注意して、飲酒をする。
2.飲み始めの30分くらいは、意識的にゆっくり飲むようにする。
3.空腹時には飲酒を避け、食事を取りながら飲酒をする。
4.短時間に多量の飲酒(イッキ飲み)は、絶対にしない。
5.自分のペースで飲む。
予防することで急性中毒は防げるので、無理な飲み方はしないようにしましょう。

酔いつぶれた人を介護する場合

① 一人にせず、誰かが必ず付き添い、呼吸や脈を時々確認する。
②嘔吐物で窒息することがあるので仰向けにせず、横向きに寝かせる(回復体位)
※自分で吐けない場合、無理に吐かせないようにしましょう。
③吐しゃ物は、しっかり拭き取ってあげましょう。
③ベルトやネクタイなどの締め付けているものを外し、衣服を緩める。
④急性アルコール中毒になると体温が下がるため、上衣などを掛けて体を温める。
⑤意識がある場合は、水分補給をし、血中アルコール濃度を下げます。
⑥時々、息をしているか、脈はあるか、確認をしましょう

下記の症状があったら救急車の手配を!

・意識がない(体を揺すっても、呼びかけても反応しない)
・全身が冷えきって冷たい
・呼吸の仕方が普通ではない
・大量の血や、食べ物を吐いている
・失禁している
・倒れて口から泡を吹いている
命にかかわる症状です!すぐ119に通報しましょう!

急性アルコール中毒にならないための注意事項

1.自分の適量を知り、その日の体調にも注意する
2.短時間に多量の飲酒(イッキ飲み)はしない
3.お酒に弱い人は、周囲の人に飲めないことを伝える
4.飲酒の無理強いはしない
5.酔った人がいたら、一人にしないようにする
6.吐いた場合は、横向きに寝かせ(回復体位)、介抱する

※回復体位が長時間になる場合は、下になった部分が血液の循環が悪くなるため、約30分ごとに反対向きの回復体位にしましょう。

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