目の病気

進化する視力矯正法に注目!
屈折異常(近視・乱視・遠視)

監修・取材協力:柳津あおやま眼科クリニック 院長
眼科専門医
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青山 勝

Medical.T 編集部 M.Hioki

  • 屈折異常とは近くや遠くがぼやけたり、二重に見えたりする状態のこと
  • 屈折異常には、近視、乱視、遠視がある
  • 子どもの視力低下者が増え、深刻な社会問題になっている
  • 主に眼鏡やコンタクトレンズで矯正ができる
  • 屈折矯正手術をすると裸眼視力での生活が可能
  • 近年、手術のいらない視力矯正治療もできるようになった

屈折異常の基礎知識

ものがはっきり見える正常な状態を「正視」といいます。これに対して、近くや遠くがぼやけたり、ものが二重に見えたりする状態を屈折異常と言います。屈折異常は、近くが見えて遠くが見えない「近視」、ものが二重に見える「乱視」、遠くが見えて近くが見えない「遠視」の3種類に分けられます。

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屈折異常の近年の動向

子どもたちが、テレビ、ゲーム機、パソコン、スマホなどに触れる機会が増えたことで、子どもの視力低下者が年々増え、深刻な社会問題になっています。2018年度の学校保健統計(1979年より開始)によると、今年度は、裸眼視力が1.0 未満の者が、小学校と高等学校で過去最高となりました。
そして、最先端の治療方法として、学童期においての近視抑制治療が注目されています。「低濃度アトロピン点眼薬」を使用することによって近視の進行が6割程度抑えられたという報告もあります。

眼球断面図と組織の役割
平成30年度学校保健統計(学校保健統計調査報告書)参照に弊社にて作成

屈折異常の症状

・近視
日本人に最も多い屈折異常が近視です。近くは見えますが、遠くが見えにくくなります。

・乱視
光の焦点が分かれることで、ぼやけて見えたり、二重に見えたりします。

・遠視
遠くはよく見えますが、加齢とともに遠くも近くも見えにくくなります。度が強いと、遠くも近くもぼやけてしまい、幼児の場合は気づかないうちに弱視となっていることがあるので、検診などでの早期発見、早期治療が大切です。

屈折異常の検査方法

近視や乱視などの度数(屈折)を調べるオートレフケラトメーターや、自覚的屈折検査、角膜形状解析(トポグラフィ)などの検査機を使用したり、さまざまな方法で近視の程度や乱視の角度などを測定します。また、眼の緊張をほぐす薬剤を用いて屈折度を調べる検査を行い、一過性の仮性近視がどうか判断します。

屈折異常の原因

眼球断面図と組織の役割

主に、角膜から網膜までの距離(眼軸長)が伸びて長くなることにより、目に入った光が、目の奥まで届かず、網膜の手前に焦点が合ってしまうことで起こります。成長期に眼球が伸びて近視が進行することが多くみられ、遺伝や環境などよるもので「単純近視」と言われます。他には、主に近視が強すぎることによって起こる(大人になってもどんどん近視が進行して様々な目の病気を引き起こす)「病的近視」があります。幼児期の段階から始まって進行し、発生する原因は、まだ不明です。網膜などが傷んでしまい、ひどくなると失明のリスクもあります。

眼球断面図と組織の役割
眼球断面図と組織の役割

主に、ドーム形をした角膜が上下左右非対称であることや、水晶体が歪んでいることによって、光の焦点が分かれてしまい、ものが2つにも3つにも見えます。乱視には、歪みに対称性があって、眼鏡での矯正が可能な「正乱視」と、歪みが非常に不規則で、眼鏡では視力が出にくい「不正乱視」があります。

眼球断面図と組織の役割

眼球が小さく、角膜から網膜までの距離(眼軸長)が短いことにより、焦点が網膜よりも後方に合うことによって起こります。眼球の小ささは生まれつきであり遺伝と体質によるもので、原因は解明されていません。

屈折異常の治療方法

眼球断面図と組織の役割

単純近視の場合、生活に支障があれば、凹レンズ眼鏡やコンタクトレンズで矯正したり、レーシック手術などの屈折矯正手術で裸眼視力を回復することもできます。そして近年、最も新しい近視の治療法として「オルソケラトロジー」という、手術のいらない視力矯正治療が注目されています。就寝中に視力矯正をするだけで、日中は裸眼生活ができ、近視進行抑制効果もあります。病的近視の場合は、有効な治療方法がまだありません。

・乱視
正乱視の場合、円柱レンズの眼鏡やソフトコンタクトレンズで角度を補正して矯正をします。不正乱視の場合は、眼鏡やソフトコンタクトレンズによる矯正が困難で、主にハードコンタクトレンズで矯正をします。病気などによって変形した不正乱視は網膜上のどこにも焦点が合わない状態であることが多く、完全に矯正することは困難です。

眼球断面図と組織の役割

年齢や遠視の状態によって治療を行います。凸レンズメガネやコンタクトレンズで矯正します。軽度であれば治療を行わないこともあり、年齢や状態、本人の意志によって屈折矯正手術をする場合もあります。特に子どもの場合は、早期介入することによって、視力の発達も期待でき、早めの治療で弱視予防の対策もできます。

屈折異常の合併症

もともと生まれたばかりの赤ちゃんは遠視であり、成長と共に眼球も大きくなり正視に近づいていきます。しかし、正視にならず遠視のままで子どもが成長してしまうと、脳の見る力の発達ができず「弱視」になってしまいます。また、脳が無理な調節を強いられることにより、「内斜視」を引き起こしてしまう事もあります。

屈折異常の予防・対策方法

・遠くを見る習慣をつける
・正しい姿勢で、勉強や読書をする
・本を読む場合は、目から30cmくらい離して読む
・寝転がって本やスマホなどを見ない
・勉強や読書をする時は、300ルクス(※)くらいの明るさにする
(※蛍光灯15~20ワット程度)
・1時間読書をしたら、目を10分程度休める
・ゲームやスマホなどは40分以上続けて使用しない
・緑黄色野菜など、栄養バランスを考えた食生活を送る

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