血液の病気

がん化した未熟な細胞が増殖
急性骨髄性白血病きゅうせいこつずいせいはっけつびょう

監修・取材協力:日本血液学会専門医、日本内科学会認定医・総合内科専門医・指導医 西大須 伊藤内科・血液内科 院長
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Medical.T 編集部 M.Ito

  • 骨髄内にある未熟な血液細胞ががん化して増殖する病気
  • 診断後は早期に治療を開始する
  • 主な症状は貧血、発熱、出血、臓器障害
  • 現時点で原因は解明されていない
  • 主な治療は抗がん剤などの薬物療法
  • 寛解導入療法、地固め療法、維持療法の3つのステップで完全寛解を目指す

急性骨髄性白血病の基礎知識

血液細胞は骨の中にある骨髄という組織でつくられます。骨髄中には、血液細胞のもとになる造血幹細胞があり、ここで血液細胞に成熟したあと血液中へ送り出されます。急性骨髄性白血病は、骨髄内にある未熟な血液細胞ががん化して増殖する病気。血液をつくる仕組みが阻害され、正常な血液細胞がつくられなくなります。無治療でいると病気は急激に悪化し、数日~数週以内で生命に危険がおよぶ可能性があるため、診断されたら早期に治療を開始することが必要です。
かつては不治の病と言われた白血病ですが、近年は化学療法の進歩により、根治を見込め悪性疾患へと変わりつつあります。

急性骨髄性白血病の近年の動向

白血病の種類や年齢、体の状態などによって 治療法や治療成績が異なりますが、従来からの抗がん剤を用いた化学療法のほかに、他人からの細胞を用いた同種移植と呼ばれる造血幹細胞移植による強力な治療が行われる場合もあります。
また同種移植も最近では高齢者の方にも可能なミニ移植と呼ばれる方法が選択される場合もあります。また同種移植では兄弟や親、子供といった血縁者からだけでなく、骨髄バンクをとおして提供される他人からの細胞や、最近では臍帯血と呼ばれる赤ちゃんのへその緒から採取した細胞が用いられたりします。さらには、新規の治療法として抗体療法や分子標的療法と呼ばれるピンポイントで病因にアプローチする治療法も開発されています。

急性骨髄性白血病の症状

めまい、だるさ、動悸、息切れなどの貧血症状、感染に伴う発熱、血が止まりにくくなったり出血しやすくなる出血傾向、白血病細胞がさまざまな臓器に侵入することで起こる臓器障害など。正常な血液細胞が不足することで、さまざまな症状が現れます。

急性骨髄性白血病の検査方法

血液細胞の数や形態に異常がないかを調べるために血液検査を行います。急性骨髄性白血病と疑われた場合は、骨の中の骨髄液や骨髄組織を採取して、顕微鏡で白血病細胞の有無や種類を調べる骨髄検査を行います。

急性骨髄性白血病の原因

放射線の大量被爆や化学療法後の影響といった特殊な場合を除き、現時点で原因はわかっていません。

急性骨髄性白血病の治療方法

診断されるとすぐに入院治療を開始。抗がん剤などによる薬物療法が一般的で、ほかには、造血幹細胞移植や放射線療法を病状に応じて使い分けたり、組み合わせたりします。また、症状や合併症、治療に伴う副作用を予防、軽減させるための治療も同時に行います。
薬物療法では、完全寛解を目指して、①寛解導入療法、②地固め療法、③維持療法の3つのステップで進められます。

①寛解導入療法
寛解とは、骨髄中に存在する白血病細胞が全体の5%以下の状態のこと。抗がん剤を投与して、白血病細胞を殺し増殖を抑制します。
②地固め療法
強い抗がん剤を投与して、寛解導入療法で5%以下になった白血病細胞をさらに死滅させ、0に近づけます。
③維持療法
寛解状態を継続して再発を防ぐための治療。比較的弱い抗がん剤の投与を数カ月~数年行います。通院治療のこともあります。
※治療法によっては維持療法を行わないこともあります。

急性骨髄性白血病の合併症

不整脈やめまい、吐き気、食欲不振、貧血、脱毛など、薬物療法による副作用が見られます。また、正常な白血球や抗体が減る影響で重篤な感染症を引き起こしやすくなります。

急性骨髄性白血病の自宅療法(療養方法、再発防止など)

治療中は白血球が減少するため、抵抗力が低下します。感染症を予防し、体力維持に努めましょう。

急性骨髄性白血病の予防・対策方法

残念ながら、現時点で特別な予防法はありません。

急性骨髄性白血病のセルフチェック

予防・対策はしっかりできていますか?

□  貧血の症状がある
□ だるい、疲れやすいなどの症状が続く
□ 鼻血、歯ぐきから出血がある
□ 出血が止まらない
□ 発熱が続く
□ ぶつけていないのに体にアザができる
□ 急激に体重が減った

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