胆嚢の病気

症状が複雑で判断が難しい認知症
胆石症(胆嚢結石症(たんのうけっせきしょう))

監修・取材協力:岐阜市民病院 胆膵内科部長
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向井強

Medical.T 編集部 M.Hioki

  • 胆道に胆汁の成分が固まって結石ができる病態
  • 腹痛などの症状がないものを「無症状胆石(サイレントストーン)」と呼ぶ
  • 症状には胆道痛や胆石発作、放散痛などがある
  • 胆石嵌頓の痛みは食後に出ることが多い
  • 胆石症の代表的な危険因子として「5F」が有名
  • 近年は男性の胆石保有率が増えて男女比が逆転している
  • 日本人の胆石保有率は食生活の欧米化や高齢化などを背景に年々増加
  • 予防法としては、青魚を多く摂取して3食規則正しい食事と適度な運動をする

胆石症の基礎知識

胆道に胆汁の成分が固まって結石ができる病態のことで、日本人の胆石保有率は10%程度であり、胆石保有者のほとんどは自覚症状がなく、有症状化率は年率1~3%と報告されています。
腹痛などの症状がないものを「無症状胆石(サイレントストーン)」と呼び、治療を行わずに定期的な経過観察をします。
症状には「胆道痛」や「胆石発作」と言われる特徴的な右の肋骨の下の部分やみぞおちの痛みのほか、右肩に放散する痛み(放散痛)などがあります。胆石が胆嚢の出口に、はまり込んで胆汁を出すことができない状態(胆石嵌頓)になると、胆嚢が収縮した際に痛みが生じます。この痛みは食後に出ることが多いのも特徴です。

胆石症の近年の動向

日本人の胆石保有率は食生活の欧米化や高齢化などを背景に年々増加しており、人口の約10%が胆石を保有しているとされています。症状のない胆石保有者が何らかの症状を発症して胆嚢摘出術を必要とするリスクは20~40%、年率1~数%と推測されています。
また、結石ができやすい人の特徴として、女性であることも危険因子とされていましたが、近年は男性の胆石保有率が増えて男女比が逆転してきているようです。
しかし、最近15年間は全国的な疫学調査が行われていないため、詳細は不明です。

胆石症の症状

胆石症のうち腹痛などの症状がないものを「無症状胆石」といい、治療を行わずに定期的な経過観察をします。「胆道痛」または「胆石発作」といわれる特徴的な右の季肋部(肋骨の下の部分)や心窩部(みぞおち)の痛み、右肩に放散する痛みがみられます。この痛みは食後、特に脂っこいものを食べたあとに出ることが多いという特徴があります。

胆石症の検査方法

胆石の有無については、体外式超音波検査(エコー)で簡単に診断することができます。その他、MRI(磁気共鳴画像)検査(MRCP)、CT(コンピューター断層撮影)や内視鏡を用いた検査(超音波内視鏡検査:EUS、内視鏡的逆行性膵胆道造影検査:ERCP)による精密検査があります。MRCPは超音波検査と同様に体に対する負担のない検査ですが、CTでは被爆の問題や造影剤を使用する場合には造影剤の副作用の心配もあります。EUSは消化管から胆嚢を描出できるため、詳細な観察ができます。近年では、診断を目的としたERCPは施行されておらず、内視鏡的総胆管結石除去術等の治療を目的に行われることがほとんどです。精密検査は手術前や胆嚢癌の鑑別を目的に行うことが多く、その適応については医師に判断してもらう必要があります。

■胆嚢結石の画像(撮影:岐阜市民病院)

写真:左から 体外式超音波、MRI(T2強調画像)、MRCP、CT(冠状断)

胆石症の原因

胆石は結石成分の違いによってコレステロール石と色素石(ビリルビンカルシウム石、黒色石)の2種類に大別され、日本人ではコレステロール石がおよそ80%と最も多いとされています。コレステロール石は、胆汁中のコレステロール濃度が高いときや胆嚢の収縮機能が低下したときに、コレステロールが結晶化して胆石になります。胆石症の代表的な危険因子としては、5F[Forty(40代以降)、Female(女性)、Fatty(肥満)、Fair(白人)、Fecund・Fertile(多産・経産婦)]が有名であり、コレステロール石の危険因子「5F」と言われています。色素石のうち、ビリルビンカルシウム石は胆汁の細菌感染が原因と考えられていますが、黒色石と呼ばれる石の原因はわかっていません。

胆石症の治療方法

腹痛などの症状がない無症状胆石(サイレントストーン)の場合は、治療を行わずに定期的な経過観察をします。しかし、大きな結石(3cm以上)や結石量(数と体積)のため胆嚢癌の存在を否定できない場合は、症状がなくても手術を勧めることがあります。

症状がある場合は、胆石や胆嚢の状態などによっていくつかの治療法があります。コレステロール結石では、胆汁酸製剤(ウルソデオキシコール酸)の溶解効果が認められており、結石の大きさが15mm以下・石灰化のないコレステロール結石で胆嚢の動き(収縮機能)が正常な場合に適応となります。1年間内服を続けると24~38%は溶解に成功するとされていますが、内服を中止すると60%ぐらいの患者さんで再発します。このため、溶けたあとも胆汁酸製剤の内服を続ける必要があります。

他には、体の外から衝撃波を胆石に照射して胆石を砕く体外衝撃波胆石破砕療法(ESWL)もあり、単発(結石が1個)・直径20mm以下・石灰化のないコレステロール石で胆嚢の収縮機能が正常な場合、1年後の消失率は60~90%になります。しかし、10年間で60%ぐらい再発するなど、ESWLには高い再発率のほか、治療に時間がかかるという問題点があり、近年では行われなくなってきています。

胆石発作や急性胆嚢炎による腹痛などの症状を伴う胆嚢結石に対する根本的治療は、胆嚢摘出術(結石を含めて胆嚢ごと摘出)になり、主に腹腔鏡を用いた胆嚢摘出術(腹腔鏡下胆嚢摘出術)となっています。腹腔鏡下胆嚢摘出術は傷口が小さく、術後の痛みが少ないため、日常生活への復帰が早いことが特徴です。しかし、炎症などによる胆嚢と周囲臓器との癒着が強い場合や胆嚢癌の合併が疑われる場合など、腹腔鏡下胆嚢摘出術が難しい場合は開腹手術となります。

胆石症の自宅療法(療養方法、再発防止など)

胆嚢摘出術を受けたあとは通院する必要はありません。療養や再発防止の必要もなく、通常の生活を送ることができます。胆嚢摘出術後に糞便中の水分が増加して下痢になることがありますが、消化や吸収機能が低下することはありません。ただし、腹痛などの症状があるときには受診することをお勧めします。
胆石症診療ガイドライン2016では、胆石症には経過観察を目的とした年1回の検査が推奨されています。健診や人間ドックの際や、かかりつけ医で腹部エコーをして変化がないかどうかを確認するとよいでしょう。

胆石症の予防・対策方法

胆石症は肥満の主要な随伴症となっており、BMIが女性で34以上、男性で38以上の肥満者は非肥満者に比べて、胆石症、胆嚢炎の発生が高率であるとの報告があります。一方で、急激な体重減少(ダイエット)も胆石症の危険因子とされていますので、体重の変動には十分注意する必要があります。胆石の予防には、果実、野菜、植物性蛋白、食物繊維、適度なカフェインの摂取と適度な運動等が報告されています。青魚をたくさん食べて、食事と運動で胆石を予防しましょう。規則正しい生活によって健康を維持することは、胆石症のほか万病を予防することにも繋がりそうです。

胆嚢の病気

胆石ができやすい人の生活チェック

□家族や血縁者に胆石症の人がいる
□太っている
□糖尿病である
□コレステロール値が高い
□食事時間が不規則
□栄養のバランスがとれていない
□朝食を食べない
□脂っこいものや甘いものが好き
□極端なダイエットをしている
□運動不足
□ストレスが多い
1つでもあったら、要注意!

胆石があるかも!? 食後のセルフチェック

□食後、右上腹部に違和感や不快感
□右側のみぞおち付近に鈍痛
□右肩から背中付近に鈍痛や違和感
□吐き気やおう吐
□軟便など、便通の不調
□発熱や黄疸(おうだん)
1つでもあったら、検診をおススメします。

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