血液の病気
がん化した細胞が分化・成熟して増殖
慢性骨髄性白血病
監修・取材協力:日本血液学会専門医、日本内科学会認定医・総合内科専門医・指導医 西大須 伊藤内科・血液内科 院長
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- 患者の多くにフィラデルフィア染色体という異常な染色体が認められる
- 慢性期、移行期、急性転化期の3つの病期がある
- ゆっくりと進行する
- 慢性期は自覚症状がほとんどない
- 主な治療は分子標的療法
- 慢性骨髄性白血病の基礎知識
- 慢性骨髄性白血病の近年の動向
- 慢性骨髄性白血病の症状
- 慢性骨髄性白血病の検査方法
- 慢性骨髄性白血病の原因
- 慢性骨髄性白血病の治療方法
- 慢性骨髄性白血病の自宅療法(療養方法、再発防止など)
- 慢性骨髄性白血病の予防・対策方法
- 慢性骨髄性白血病のセルフチェック

慢性骨髄性白血病の基礎知識
フィラデルフィア染色体という異常な染色体が造血幹細胞に発生するため、そこから分化・成熟した白血球が大量に増える病気。慢性期、移行期、急性転化期の3つの病期があります。ゆっくりと進むため、慢性期ではほとんど症状が出ない場合が多いです。慢性期に治療を行わなかった場合や、治療を行っても効果が得られなかった場合は約5~6年で移行期を経て急性転化期へ進行。移行期になると進行が徐々に速くなり、白血病細胞の染色体・遺伝子がさらに悪性化。急性転化期には急性白血病のような病状が現れます。
慢性骨髄性白血病の近年の動向
2001年、慢性骨髄性白血病の原因であるフィラデルフィア染色体という異常遺伝子が作り出すタンパクを標的とする分子標的治療薬が登場し、治療成績が劇的に向上しました。これは内服薬でありながら従来の骨髄移植に匹敵する治療効果が得られる夢のような薬です。その後、さらに改良を加えた第二、第三世代の分子標的治療薬が開発され、今では分子標的治療薬が慢性骨髄性白血病の標準的な治療法となりました。
慢性骨髄性白血病の症状
慢性期にはほとんど症状は見られません。病気の進行につれて、全身倦怠感、微熱、夜間の発熱、体重減少などが現れ、移行期になると貧血、発熱、脾臓の腫れが見られます。急性転化期には急性白血病のような病状となり、貧血や出血傾向、高熱などが現れ、慢性期のような病気のコントロールが難しくなります。
慢性骨髄性白血病の検査方法
慢性期にはほとんど自覚症状がありませんが、白血球数は増加しているため、健康診断や他の病気の検査で発見されることが多いです。慢性骨髄性白血病と疑われた場合は、血液検査や骨髄検査によって、フィラデルフィア染色体・BCR-ABL遺伝子の有無を確認して、確定診断をします。
慢性骨髄性白血病の原因
慢性骨髄性白血病の患者さんの多くにフィラデルフィア染色体という特殊な染色体にできる異常な遺伝子(BCR-ABL遺伝子)が認められます。この遺伝子からつくられる異常なタンパクが白血病細胞を増殖させています。
慢性骨髄性白血病の治療方法
病期、年齢、状態により治療方法は異なりますが、分子標的療法、インターフェロン療法、抗がん剤治療、造血幹細胞移植などが行われます。慢性期には主に分子標的療法を行い、フィラデルフィア染色体がつくり出す異常なタンパクの働きを抑えて、白血病細胞を死滅させる分子標的治療薬を内服します。通院での治療が可能なため、治療しながら通常の社会生活を送ることができます。移行期・急性転化期に進行すると、治療の効果が得られにくくなることから、白血病細胞の増殖を抑えて早く減らすことで、移行期・急性転化期への進行を防ぐことが治療の目的となります。
慢性骨髄性白血病の合併症
むくみや胸水、吐き気、下痢、貧血、出血傾向、頭痛、発疹など、分子標的治療薬による副作用が見られます。また、正常な白血球や抗体が減る影響で重篤な感染症を引き起こしやすくなります。
慢性骨髄性白血病の自宅療法(療養方法、再発防止など)
慢性期における日常生活の制限はほとんどありません。バランスのとれた食事、十分な睡眠、規則正しい生活を心がけましょう。
慢性骨髄性白血病の予防・対策方法
残念ながら、現時点で特別な予防法はありません。
慢性骨髄性白血病のセルフチェック
予防・対策はしっかりできていますか?
□ 血液検査で白血球数が多いと指摘された□ 貧血の症状がある
□ だるい、疲れやすいなどの症状が続く
□ 急激に体重が減った