膝関節のはなし

歩行や動作時に膝が痛む
結晶誘発性関節炎けっしょうゆうはつせいかんせつえん

監修・取材協力:森整形外科リハビリクリニック理事長/院長
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森 敦幸

Medical.T 編集部 M.Hioki

  • 関節内に結晶が析出沈着して炎症が起き、痛風や偽痛風などがある
  • 痛風は尿酸結晶、偽痛風はピロリン酸カルシウム結晶によっておこる
  • 偽痛風は突然発症し、痛風は前兆のようなものがあることがある
  • 関節に激痛が起き、炎症や熱を伴う
  • 治療方法は、偽痛風は対症療法、痛風は薬物療法と生活習慣の改善
  • 痛風は男性に、偽痛風は女性に多く発症

結晶誘発性関節炎の基礎知識

関節内に尿酸やピロリン酸カルシウムの結晶が析出沈着して引き起こされる炎症のことで、痛風は尿酸結晶によって起こり、偽痛風は主にピロリン酸カルシウムの結晶が原因となります。痛風は男性に多く、偽痛風は女性にやや多く発症します。
痛風は、生活習慣が主な原因と言われています。痛風以外の結晶誘発による関節炎を総称して偽痛風と言います。
偽痛風は何の前兆もなく突然発症し、関節や関節周囲が赤く腫れ、動かせないほどの急性炎症を起こします。膝関節に多発し、時には発熱などの全身症状を伴うこともあります。

結晶誘発性関節炎の近年の動向

国民生活基礎調査から推定される日本の痛風患者数は100万人以上。30年前と比べて5倍以上となり、増加の一途をたどっています。圧倒的に男性が多く、当然、痛風関節炎を発症する人も増えています。食生活や生活習慣の欧米化、メタボリックシンドロームの急増によるものとされています。

結晶誘発性関節炎の症状

痛風も偽痛風も関節に激しい痛みが生じ、関節炎を生じた場所は赤く腫れ、熱を伴います。
【偽痛風】
特に前触れがなく、突然、激痛が生じる急性の関節炎です。
【痛風】
前兆が現れた時に治療をすれば、痛風発作を防げることがあります。痛風発作を防げなかった場合は、通常は24時間以内に痛みのピークがあり、その痛みが2~3日続き、数日~2週間で症状は治まることが多いです。

結晶誘発性関節炎の検査方法

【偽痛風】
関節が炎症を起こし、腫れや熱がある場合は偽痛風を疑い、血液検査やレントゲン(X線)写真の石灰沈着像で診断します。また、関節穿刺をして、関節液中のピロリン酸カルシウムを確認する顕微鏡検査をする場合もあります。
【痛風】
診察により痛風関節炎や痛風結節を確認し、血液検査や尿検査によって、尿酸値を調べたり 顕微鏡検査で関節液内の尿酸結晶の存在を確認したりします。

結晶誘発性関節炎の原因

【偽痛風】
関節内にピロリン酸カルシウム結晶が析出することが原因で、炎症が起きます。ピロリン酸カルシウムは関節の軟骨でつくられ、過剰になると結晶となり関節などに付着して痛みが生じます。その原因としては、遺伝、加齢、変形性関節症、関節リウマチ、副甲状腺機能異常などがあります。
【痛風】
生活習慣が主な原因であり、血中の尿酸が結晶となって関節などに沈着することにより、関節痛が生じます。

結晶誘発性関節炎の治療方法

【偽痛風】
痛みや炎症に対する治療が中心の対症療法で治療します。痛みに対しては消炎鎮痛剤、強い炎症には、炎症を抑えるためにステロイド剤の関節内注入をすることもあります。強い痛みが持続する場合にはピロリン酸カルシウム結晶を減らすために関節内の洗浄を行うこともあります。
【痛風】
薬物療法による治療と食生活や生活習慣の改善が重要となります。痛風発作の痛みには、鎮痛薬を使い、痛風発作が治まってから血中の尿酸値を下げるために尿酸降下薬の服用を開始します。

結晶誘発性関節炎の自宅療法(療養方法、再発防止など)

炎症を起こして痛みのある関節をなるべく安静にしてください。氷のうなどで冷やすのも効果的です。入浴によって温めたり、飲酒して血流がよくなると、痛みが強くなることがあるため注意が必要です。
痛風の場合は暴飲暴食や脱水などが発作の原因となることがあります。尿酸値が高いといわれている場合は注意が必要です。

結晶誘発性関節炎のセルフチェック

□関節に激痛がある
□関節を触ると腫れている、熱を持っている
□過去に血液検査で尿酸が高いといわれたことがある

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