歯と口のトラブル

腫れや炎症がないのに舌がピリピリする
舌痛症ぜっつうしょう

監修・取材協力:医療法人 タナカ歯科 院長
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田中 孝宜

Medical.T 編集部 M.Ito

  • 舌の先端から両側にかけて起きる原因不明の痛み
  • ヒリヒリ、チクチクと痛む
  • 更年期世代の女性に多く発症する傾向がある
  • 食事や会話中は痛みが緩和する人が多い
  • 心理的ストレスや生活習慣と関わりがあると考えられている

舌痛症の基礎知識

外見上異常がないのに、口の中の粘膜面に生じる原因不明の痛み。ヒリヒリ、ピリピリ、カーッとする痛みや不快感・熱さが慢性的に続きます。40~50代の更年期世代の女性に多く発症する傾向があり、ストレスや不安、ホルモンとの関連などがその一因と考えられています。舌痛症は口腔内灼熱症候群(こうくうないしゃくねつしょうこうぐん)、バーニングマウス症候群とも呼ばれています。

舌痛症の近年の動向

舌痛症も近年増加傾向にあり、知覚過敏同様に昔はあまり聞きなれない病気でしたが、右肩上がりに増えています。原因が多様で、口腔内の人工物の干渉からサイコロジックな原因、薬の副作用など挙げればきりがなく、その複合原因も考えられます。

舌痛症の症状

舌の先端から両脇にかけて、ヒリヒリと焼けるように痛む、チクチクと刺すように痛むのが主な症状。異常感として訴えることが多く、そしてその痛みや異常感はお食事の際には消失するか軽減し、日常生活にはほとんど支障をきたさないことが多いです。舌だけでなく、唇、歯肉、上顎など他の口腔内の部位に生じることもあります。

舌痛症の検査方法

舌炎やがんなど、舌の痛みになる疾患がないかを調べます。血液検査や細菌検査、唾液分泌量の測定や口腔粘膜のカンジダの有無などを検査し、舌の痛みが他の疾患によるものという可能性を除外した上で、舌痛症と診断します。

舌痛症の原因

原因は特定されていませんが、心理的ストレス、ホルモンバランスの乱れ、食生活、加齢、喫煙、糖尿病、潰瘍など、さまざまな病気や生活習慣が関連していると考えられています。最近の研究(2002年以降)では、ドライマウスの因子も多く含んでいると言われています。

舌痛症の治療方法

これまでの診断では、舌の痛みに対する不安を取り除くためにメンタル面の治療として精神安定剤、抗うつ剤、向精神薬などが処方されるケースが一般的でした。精神面での不安を和らげる効果はありますが、かえって症状が進行するケースもあります。
精神安定剤、抗うつ剤などには唾液腺を支配している神経に作用し唾液分泌量を低下させる作用が知られています。よってドライマウスの症状が現れることもあり注意が必要です。痛みが解消されないようであれば担当の医師とよく相談してください。
抗うつ薬を服用すると、早ければ4~5日目から、遅くても1週間から10日くらいで痛みが緩和していきます。理想的に治療が進展していけば、3~4週間後には痛みは7割方改善していきます。胃腸の調子が少し悪くなる場合もありますが、軽い整腸剤を併用すればすぐに治まります。不眠などが伴う場合、睡眠導入薬や抗不安薬(いわゆる安定剤)を併用することもあります。

舌痛症の合併症

痛みによるストレスで、胃や肩・首・頭の痛み、不眠、めまい、味覚障害などを発症する場合があります。

舌痛症の自宅療法(療養方法、再発防止など)

香辛料など刺激の強い食べ物は避け、ガムを噛む、口をゆすぐなど、口腔内が気持ち良くなる工夫をしましょう。また、旅行やショッピング、映画鑑賞など趣味を見つけてそれに打ちこむ時間をできるだけたくさん作りましょう。舌痛症と診断されたら、自分の舌を鏡で見ないことをおすすめします。

舌痛症の予防・対策方法

原因が解明されていないため特定の予防法はありません。しかし、ストレスや不安などがその一因と考えられているため、睡眠や休息を十分に取り、ストレスをため込まないように心がけましょう。禁煙、虫歯治療、義歯の不具合調整、正しいブラッシングなどで、常に口腔内を清潔に保ちましょう。

舌痛症のリスクチェック

□ 閉経後の女性
□ ストレスを抱えやすい
□ 喫煙者

舌痛症のセルフチェック

予防・対策はしっかりできていますか?

□ 口腔内を清潔に保つ
□ 虫歯があれば治療する
□ 十分な睡眠をとる
□ 栄養バランスのとれた食事を心がける

下記のような症状はありますか?

□ 舌の痛みが慢性的に続く
□ 見た目は異常が無いのに舌に違和感がある

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