甲状腺の病気

甲状腺ホルモンが不足する
橋本病

監修・取材協力:名古屋甲状腺診療所
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岐名古屋甲状腺診療所 大江秀美

Medical.T 編集部 M.Hioki

  • 自己免疫システムに異常が生じて起きる疾患
  • 甲状腺内に慢性の炎症が起こる病気で「慢性甲状腺炎」とも呼ばれる
  • 甲状腺が全体的に腫れるびまん性甲状腺腫が特徴的な症状
  • 圧倒的に女性に多く発症する
  • 人によって甲状腺の腫れや炎症具合が異なるが、通常は熱や痛みはない
  • 無症状の人も多く、甲状腺機能が低下すると、人によってさまざまな症状が出現する
  • 甲状腺機能低下症になると、甲状腺ホルモン薬の治療が必要

橋本病の基礎知識

橋本病は1912年に九州大学の橋本策(はかる)博士がこの病気を世界で初めて報告したことより、博士にちなんで名付けられました。自己免疫システムに異常が生じて起きる疾患で、橋本病は甲状腺内に慢性の炎症が起こる病気で慢性甲状腺炎とも呼ばれています。甲状腺が全体的に腫れるびまん性甲状腺腫が特徴的な症状で、通常は痛みや熱はありません。圧倒的に女性に多く発症し、多くの人は自覚症状がありません。人によって甲状腺の腫れの程度は異なり、炎症の程度によって甲状腺機能の状態も異なります。機能が正常の場合には症状がありませんが、甲状腺機能低下症(甲状腺ホルモンが不足する状態)になると倦怠感、むくみ、疲れやすい、寒がりなどのさまざまな症状があらわれます。甲状腺機能が低下している場合は、不足している甲状腺ホルモンを内服する薬物療法によって、甲状腺機能を正常に維持します。

橋本病_年齢と男女比
◎名古屋甲状腺診療所の橋本病患者データ(2004~2019年)をもとに、弊社にて作成

橋本病の症状

特徴的な症状としては、甲状腺が全体的に腫れるびまん性甲状腺腫があげられ、通常は痛みや熱はありません。人によって腫れや炎症の程度が異なり、甲状腺機能の状態も異なります。甲状腺機能が正常であれば全身の症状はありませんが、甲状腺機能低下症になると、体の怠さ、むくみ、寒がり、無気力、便秘、体重増加などの症状があらわれ、血液検査でもコレステロール値が高くなることがあります。

橋本病の症状

橋本病の検査方法

問診と触診で甲状腺の状態をチェックし、橋本病の疑いがある場合は血液検査で甲状腺機能や抗甲状腺抗体の有無、超音波検査で甲状腺のサイズや内部の状態を調べます。血液検査で抗体の検査をしてもはっきりしない場合は、穿刺吸引細胞診検査を行うこともあります。

橋本病の原因

免疫システムに異常が生じて起きる自己免疫性疾患の一つで、甲状腺に炎症が起き、甲状腺が腫れたり、機能異常が発生します。自己免疫疾患が起きる原因は、まだわかってはいません。

橋本病の治療方法

甲状腺機能が正常であれば、治療の必要はありません。甲状腺ホルモン値が低下した場合は、不足している甲状腺ホルモンを補うために、甲状腺ホルモン薬を服用して正常に戻します。正常になれば症状は改善し、内服治療を中止できる人も一部にはいますが、多くの人は継続する必要があります。無症状で治療が必要ではない場合も、年に1回程度の血液検査を行い、機能の変化がないかチェックをします。

橋本病の予防・対策方法

甲状腺機能が正常になっても、毎日、決められた薬の用量を服用し続けることが大切です。

橋本病のセルフチェックと【間違われやすい病気】

□むくむ(顔、全身)【腎臓病や心臓病】
□基礎体温の低下【冷え性】
□倦怠感、疲労感、意欲の低下、眠気【更年期障害・うつ病】
□月経異常【更年期障害や婦人科系疾患】
□集中力・記憶力の低下【認知症】
□声が低くなる【耳鼻咽喉科の病気】
□抜け毛【脱毛症】
□手足がしびれる【末梢神経炎】
□便秘【大腸の病気】

※チェックが多数なら、甲状腺の検査を行いましょう!

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