加齢などによって誰でもなりうる良性の病気

成人の腹部のヘルニア
大腿ヘルニア

監修・取材協力:医療法人いまず外科 院長
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今津 浩喜(いまづ ひろき)

Medical.T 編集部 M.Hioki

  • 腹膜や腸の一部が、本来あるべき場所から大腿部の皮膚の下に出てくる病気
  • 脚の付けねの少し下部分(大腿)に膨らみができ、やや疼痛を伴う
  • 嵌頓(かんとん)になりやすいため、早めに病院で診察してもらう
  • 中年以降の痩せた女性に多く、特に多産の経産婦に発生
  • 治療方法は手術のみ
  • 日帰り手術が可能

大腿ヘルニアの概要

お腹にあるはずの腸などの一部が、大腿(鼠径部の下の、脚に繋がる太もも部分)の皮膚の下に突出し、大腿に膨らみができるヘルニア。大腿輪と呼ばれる脚につながる血管や神経が通る穴を塞いでしまうため、最も嵌頓(かんとん)しやすく注意が必要であり、初発時に手術をすることが多いようです。疼痛を伴い、中年以降の痩せた女性(特に経産婦)に多く見られます。

男女別初発鼠径部ヘルニア病型の内訳(2007〜2017年)

大腿ヘルニアの症状

脚の付けね(鼠径部)のやや下部分になる、大腿部が膨らみます。自覚症状は少なく、軽度の腹痛程度ですが、ヘルニア門(大腿輪)が狭く、他のヘルニアに比べて嵌頓を起こしやすいため、注意が必要です。嵌頓すると、腹痛や吐気の症状が生じ、腸が壊死して命にかかわる危険な状態になることがあります。大腿ヘルニアの疑いがある場合は、すぐに病院に行き、診断してもらいましょう。

大腿ヘルニアの原因

加齢などによって筋肉や筋膜が弱くなることや、腹圧がかかりやすい状態が続いたときに起こりやすく、中年以降の痩せた女性に多くみられます。特に、出産を多く経験した経産婦に多いと言われています。女性は男性より大腿輪のすき間が広いことや、分娩で大腿輪周囲の筋肉や筋膜が弱くなるためと考えられています。

大腿ヘルニアの検査方法

多くは、問診、視診、触診による診察のみで診断されます。診察で判断しかねる際には、腹部エコー検査を行います。手術前提の場合には、詳しく調べるために、腹部のCT、MRIの検査を行います。

大腿ヘルニアの治療方法

治療は手術のみになります。嵌頓を起こしていない場合は、人工補強材を使った「テンションフリー法」が主流となっています。この新しい手術法では、短時間の手術で、術後の痛みも軽く、再発率低くなっています。日帰り手術、または1泊~数日入院での治療によって、早期社会復帰ができるようになりました。

大腿ヘルニアの予防・対策方法

日帰り手術の翌日から日常生活は、ほぼ可能ですが、1週間程度は無理せず過ごしましょう。2~3週間は下腹部に力が加わる動作や、激しい運動は避けてください。食生活などにも気を付けて、便秘にならないように心がけることも大切です。
また、片側のヘルニアを手術した後、反対側で発症するケースもあるので、腹圧がかかることをする場合は注意してください。

臍ヘルニアになりやすい人 セルフチェック

□40歳以上の女性
□出産経験が多い
□痩せている

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