血液の病気

形質細胞ががん化する
多発性骨髄腫たはつせいこつずいしゅ

監修・取材協力:日本血液学会専門医、日本内科学会認定医・総合内科専門医・指導医 西大須 伊藤内科・血液内科 院長
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Medical.T 編集部 M.Ito

  • 体を守る働きをする形質細胞ががん化し、さまざまな症状を引き起こす
  • 役立たずのMタンパクを大量につくり、骨髄中で異常増殖する
  • 主な症状は、貧血、骨の痛み、骨折、腎障害
  • 中高年に多く見られる
  • 近年新規の治療薬が次々と開発され、治療法と治療成績が劇的に進歩している

多発性骨髄腫の基礎知識

血液細胞の一つ、形質細胞ががん化する病気。通常、体内に細菌やウイルスが侵入すると、リンパ球の一つB細胞は刺激を受けて形質細胞に分化し、抗体をつくって異物から体を守る働きをしています。この形質細胞ががん化すると、異物を攻撃する力を持たない役立たずの抗体(Mタンパク)を大量につくり、骨髄中で異常に増殖するようになります。体のいろいろな部位の骨髄で増殖するため、正常な血液をつくれなくなるだけでなく、骨をもろくしたり、臓器の働きを低下させるなど、さまざまな症状が現れます。中高年に多く見られ、比較的進行が遅いという特徴があります。
多発性骨髄腫には複数の病型があり、骨髄腫細胞の有無、Mタンパクの有無、臓器障害の有無などによって分類され、治療も異なります。最も多い病型は症候性多発性骨髄腫です。

多発性骨髄腫の近年の動向

中高年に多い病気のため、人口の高齢化に伴い、患者数が年々増加傾向にあります。一方で、かつては治療法が限られていましたが、プロテアソーム阻害剤や免疫調整薬に代表される新薬の導入により、予後は著しく改善しています。

多発性骨髄腫の症状

正常な血液がつくられなくなることで、貧血や出血傾向などの症状が現れます。骨髄腫細胞が骨を壊す細胞を刺激するため、骨がもろくなり、腰痛や背中の痛み、骨折が見られます。また、役立たずのMタンパクが臓器に貯まることで腎臓の機能が悪くなり、むくみが出たり尿が減るなどの症状が見られます。

多発性骨髄腫の検査方法

Mタンパクの有無や臓器が障害を受けていないかを血液検査や尿検査で調べ、骨の状態をX線写真で調べます。多発性骨髄腫と疑われた場合、骨髄検査、CT・MRIによって専門的な検査を行い、確定診断をするとともに重症度を確認します。

多発性骨髄腫の原因

形質細胞の異常がなぜ起こるのか、現時点で原因はわかっていません。

多発性骨髄腫の治療方法

初期の段階では、積極的な治療は行わず、定期的な検査で経過を観察します。最も多い症候性多発性骨髄腫には、薬物療法、造血幹細胞移植など骨髄腫細胞の数を減らすための治療が行われます。骨の痛みなどの症状がある場合は、薬物治療、放射線治療、手術、鎮痛剤投与で症状を抑えるための治療も行います。かつては完治が難しい病気とされていましたが、プロテアソーム阻害剤や免疫調整薬に代表される新薬の導入により、予後は著しく改善しています。さらに最近では抗体療法も加わり、治療成績は年々改善しつつある近年最も治療法の進歩がみられる血液疾患となっています。高齢者にも可能な治療薬が多く、1年から2年と長期にわたり治療を継続することで、治癒に近い状態で良好に病気をコントロールできる方が増えています。

多発性骨髄腫の合併症

骨変異、貧血、腎障害、高カルシウム血症、過粘調度症候群、アミロイドーシスなどの合併症を引き起こす場合があります。

多発性骨髄腫の自宅療法(療養方法、再発防止など)

動かないでいると、余計に骨がもろくなり筋力も低下してしまうため、適度な運動は必要です。病気が十分コントロールできるまでは重い荷物を持ち上げる、体をねじるなど骨に負担をかけると骨折しやすいため注意が必要です。腎機能の低下を防ぐためにも水分を意識的にとりましょう。

多発性骨髄腫の予防・対策方法

残念ながら、現時点で特別な予防法はありません。

多発性骨髄腫のリスクチェック

□ 50歳以上の方

多発性骨髄腫のセルフチェック

予防・対策はしっかりできていますか?

□ 腰や背中の骨が痛む
□ 貧血の症状がある
□ むくみがひどい
□ 健康診断で血液や尿、腎機能の異常を指摘された

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