急性中毒

乳幼児のタバコ誤食に注意!!
急性ニコチン中毒

監修・取材協力:岐阜県総合医療センター 救命救急センター長
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豊田泉

Medical.T 編集部 M.Hioki

  • 主にタバコの誤食や浸した液体の誤飲による事故で、急性ニコチン中毒を発症。
  • ニコチンの致死量としては、乳幼児が10~20mg、成人は40~60mg。
  • 初期症状は誤食後15分から1時間以内に発症。
  • 症状としては、めまい、嘔吐、顔面蒼白、下痢、錯乱、全身けいれんなど。
  • 少量においても非喫煙者は重篤な症状が生じる場合がある。
  • 4~6時間は遅発症状の可能性があるため経過観察する。

急性ニコチン中毒の基礎知識

ニコチンは神経毒性の強い猛毒で、毒物になります。タバコの葉に含有されていて、喫煙の煙から体内へニコチンが取り込まれ、血液中に広がります。急性ニコチン中毒は、過剰摂取によって毒による症状が現れている状態になります。主にタバコの誤食やタバコを浸した液体の誤飲による事故によって発症します。紙巻タバコ1本にはニコチンが10~30mg含有しており、致死量としては、乳幼児が10~20mg、成人では40~60mgが致死量に値します。初期症状は誤食後15分から60分以内に発症し、めまい、嘔吐、顔面蒼白、腹痛、下痢、錯乱などの症状、致死量の場合は全身けいれんや昏睡などの症状が生じます。また少量においても非喫煙者は重篤な症状が生じる場合があります。
禁煙目的のニコチンやニコチンガムの誤食によっても急性中毒は生じうるので、乳幼児のいる環境では、特に注意をしましょう。

急性ニコチン中毒の近年の動向

日本中毒情報センターによると、小児の誤飲・誤食事故で最も多いのがタバコによるものであり、加熱式タバコが全国で発売されるようになった2016年以降、中毒110番への誤飲事故に関する相談も急増しています。日本中毒情報センターには2016年1月~2017年12月の間に1,678件の問い合わせがあり、2017年後半には紙巻きタバコより件数が逆転しています。加熱式タバコの葉が詰め込まれているカートリッジが、紙巻タバコより小さいため、幼児が口に入れる事故が増加しています。
加燃式などの新型タバコの喫煙によるニコチン摂取量は紙巻タバコの8割程度とされていますが、満足感を得られるまで吸煙するため、ニコチン摂取量は結局、紙巻タバコと同じになり中毒を発症します。現状では長期摂取の有害性は、確認されていません。

急性ニコチン中毒の症状

軽症~中等症の症状としては、めまい、発汗、嘔吐、下痢、腹痛、縮瞳、散瞳、高血圧など。重症になると、錯乱、痙攣(けいれん)、興奮、呼吸筋麻痺、昏睡、徐脈、低血圧など、生命の危機に直面する症状が生じます。
主にタバコの誤飲・誤食により発症し、幼児の場合、初期症状は約15~60分以内に生じ、以後、症状が現れない場合、危険性は少ないと言われています。しかし、4~6時間は遅発症状の可能性があるため経過観察します。

急性ニコチン中毒の原因

大人の場合は、非喫煙者などが喫煙した際や、過剰にニコチンを摂取したことによるものなど、乳幼児の場合は、タバコの誤食やタバコを浸した液体の誤飲による事故によるものが主な原因となっています。
なお、ニコチンには強い依存性があり、タバコを喫煙し続けることによりニコチン依存症になりますが、ニコチン依存症と急性ニコチン中毒との関連性はありません

急性ニコチン中毒の治療方法

治療は症状に対しての対症療法。無症状や軽症の場合は経過観察を行い、症状があり大量摂取1時間以内であれば胃洗浄を考慮する。

急性ニコチン中毒の予防・対策方法

家の中は整理整頓をし、タバコなどの誤飲する可能性があるものは、子どもの身近に置かない。
本人家族の健康のためにも、禁煙する。
家事で忙しい時間帯に、事故は多発するため、忙しくても子どもから目を離さない。

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