歯と口のトラブル

セルフチェックで早期発見を
口腔がん

監修・取材協力:医療法人 タナカ歯科 院長
田中 孝宜医師プロフィールへ

田中 孝宜

Medical.T 編集部 M.Ito

  • 口腔がんとは口の中と唇にできるがんの総称
  • 患者自身が肉眼で観察できる
  • 初期は自覚症状がほとんどない
  • セルフチェックや口腔がん検診で早期発見できる
  • 40代後半から増加、男性に多く見られる

口腔がんの基礎知識

主に舌、口底(舌の下側)、歯ぐき、唇にできるがんの総称。できる場所により、口唇(こうしん)がん、舌がん、口底(こうてい)がん、歯肉(しにく)がんなどに分類されます。肺がんや大腸がんなどに比べて、直接肉眼で観察できるので、患者自身が発見できるのが大きな特徴。発生頻度は、がん全体の1~3%程度と多くはありませんが、あまり知られていないため進行するまで放置している人が多いと言われています。40歳代後半から増加し、男性に好発する傾向があります。

口腔がんの近年の動向

口腔がんでの死亡者数は年々増加しています。

【口唇,口腔及び咽頭の悪性新生物<腫瘍>における死亡者数の年次推移】
【口唇,口腔及び咽頭の悪性新生物<腫瘍>における死亡者数の年次推移】
◎厚生労働省「人口動態統計(死因簡単分類別にみた性別死亡数・死亡率 口唇,口腔及び咽頭の悪性新生物<腫瘍>)」を参考に弊社にて作成
©medical terrace produce by trend-sakura

口腔がんの症状

初期の口腔がんは痛みや出血はほとんどなく、しこりや、赤・白の斑点が見られる程度なため、口内炎などと見間違う場合が多いです。進行すると、痛む、しみる、出血、腫れ、痺れ、口臭、噛みづらい、飲み込みにくいなど、さまざまな自覚症状が現れ、食事や会話などの口の機能に深刻な障害が生じます。口腔がんは、口の中の歯以外のどこにでも発生しますが、最も多いのは舌です。
むし歯や歯周病など明らかな疾患がないのに、口の中に病変が見られる、しこりがある、口の中が痛む、口内炎がずっと治らない場合は早めに歯科、口腔外科、耳鼻咽喉科を受診し早期発見・早期治療につなげましょう。

口腔がんの検査方法

がんが疑われる部位の表面をこすり取り、がん細胞の有無を顕微鏡検査します。より診断を確実にするために、病変部の一部を切り取り、病理検査(生検)を行う場合もあります。がんの大きさを調べるためにはCT検査、MRI検査などの画像検査を行います。

口腔がんの原因

喫煙や飲酒が口腔がんの発生リスクを高めると考えられています。また、むし歯や義歯、歯列不正などで口の中に慢性的な刺激がある場合や、口腔内の不衛生も原因として疑われます。

口腔がんの治療方法

がんができる場所や進行によって治療法が異なりますが、口腔がんが発生している病巣を取り除く手術療法、放射線を照射してがんの死滅を目指す放射線療法、抗がん剤を用いた化学療法が行われます。

口腔がんの合併症

首のリンパ節などへ転移する可能性があります。

口腔がんの自宅療法(療養方法、再発防止など)

治療中はもちろん、治療後のアルコールやタバコは控え、規則正しい生活、バランスのよい食事、適度な運動を心がけましょう。化学療法や治療の副作用で、口の中に痛みや炎症が出る場合があるため、やさしいブラッシングやうがいなどで口腔ケアを行い、口腔内を清潔に保ちましょう。

口腔がんの予防・対策方法

口腔がんは早期発見できれば治療できる病気です。日頃から口の中の状態を観察し、こまめにセルフチェックを行いましょう。舌の裏側など見えにくい場所にも注意が必要です。また、1年に1回「口腔がん検診」を受診しましょう。初期のうちに発見することができれば、後遺症もほとんど残ることはなく、5年生存率は90%以上と言われています。

口腔がんのリスクチェック

□ 50歳以上の男性
□ アルコールとタバコの嗜好がある
□ むし歯がある
□ 入れ歯や差し歯がある
□ 口腔内が不衛生

口腔がんのセルフチェック

予防・対策はしっかりできていますか?

□ タバコを吸っていない
□ アルコールを摂りすぎていない
□ 口腔がん検診を受診している

下記のような症状はありますか?

□ 口内炎が2週間以上治らない
□ 噛んだ傷や抜歯した傷がなかなか治らない
□ 入れ歯が痛みや腫れで合わない
□ しこりが見られる
□ 歯のぐらつき、浮く感じがする
□ 出血が多い

関連TOPICS