歯と口のトラブル

歯の生活習慣病
歯周病ししゅうびょう

監修・取材協力:医療法人 タナカ歯科 院長
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田中 孝宜

Medical.T 編集部 M.Ito

  • 歯周病の原因は歯垢(プラーク)の中の細菌
  • 喫煙やストレス、食生活の乱れなども原因となる
  • 歯周病は成人が歯を失う原因第1位
  • 近年若い人で急増している
  • 自宅での正しい歯磨きと、歯科でのメインテナンスが進行抑制になる

歯周病の基礎知識

歯と歯肉(歯ぐき)の間の溝「歯周ポケット」に溜まった歯垢(プラーク)によって細菌が繁殖し、歯の周りに炎症が起きる病気。この状態を放置すると、歯周ポケットが深くなり、歯を支える土台(歯槽骨)が溶けて歯が動くようになり、歯を失ってしまいます。成人の歯を失う原因第1位はこの歯周病です。
十分に歯を磨けていないことだけが歯周病の原因となるだけでなく、喫煙や乱れた食生活、睡眠不足、ストレス、肥満など、生活習慣がこの病気の危険性を高めることから、「歯の生活習慣病」とも言われています。初期の段階では自覚症状がほとんどないため、知らず知らずのうちに進行していたというケースも少なくありません。

歯周病の近年の動向

歯周ポケットは正常な状態で約1~3mm。4mm以上になると、歯周病が進行しつつある状態です。近年、20~40代の歯周病患者が増えています。

【4mm以上の歯周ポケットを有する者の割合の年次推移】
【女性の鉄摂取量(1日あたり)】
◎厚生労働省「平成28年歯科疾患実態調査結果の概要」を参考に弊社にて作成
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歯周病の症状

歯磨き時の出血、口臭、歯肉(歯ぐき)の腫れ、歯がグラグラする、歯の根元の露出、歯が抜けるなどの症状が見られます。自覚症状が無く進行する場合が多いため、日頃から口の中を観察しておく必要があります。

歯周病の検査方法

プローブという目盛りのついた器具で歯周ポケットの深さを測定します(プロービング)。炎症、出血、歯石の付着などから進行程度を調べます。

歯周病の原因

歯垢(プラーク)の中の細菌が原因。歯垢(プラーク)は、歯磨きで取り除かなければ次第に硬くなり歯石に変化。歯石の中や周りに細菌が入り込み、歯周病を進行させます。歯磨きが十分でないことだけでなく、“低タンパク高カロリー”な食生活や喫煙、ストレス、肥満、歯ぎしりなど、生活習慣も歯周病を進行させる原因となっています。

歯周病の治療方法

歯周基本治療で、原因となる歯垢(プラーク)や歯石の除去を行います。自宅での正しい歯磨きと、歯科でのメインテナンスを継続することにより、歯周病の進行を食い止めます。歯周基本治療でポケットの深さが改善されず歯周病が進行してしまった状態に対しては、歯周ポケットを切り開いて歯石を取ったり、悪い歯肉そのものを取り除くなど、ポケットの深さを減少させる外科治療を行います。
ひとたび失われた歯周組織は自然には元の状態へ戻りませんが、近年では歯周病治療の進歩により、歯周組織を再生させる方法を取り入れて歯を残すことが可能になりました。しかしまだ現実的ではなく、ブラッシング、歯間ブラシなどで予防することが何よりも大切です。

歯周病の合併症

糖尿病、細菌性心内膜炎、誤嚥性肺炎、早産・低体重児出産、敗血症、糸球体腎炎、関節炎などの病状を悪化させる危険因子となる場合があります。

歯周病の自宅療法(療養方法、再発防止など)

進行を食い止めるには自宅での正しいブラッシングが重要です。特に歯周病は再発が多い病気。治療により症状が改善したとしても、歯周病は一度進行してしまうと、完全に元の状態に戻すのは非常に難しいため、セルフケアと定期的なメインテナンスで、再発の予防、進行の抑制を行いましょう。また、十分な睡眠や栄養バランスのとれた食事など、生活習慣の改善も大切です。

歯周病の予防・対策方法

●歯垢をためない
・正しい歯磨きを習慣づける
・むし歯や抜けた歯には歯垢がたまりやすいため、 早く治療する
・噛み応えのある食べ物で唾液の分泌を促す
・歯垢を作りやすい甘い食べ物をダラダラと食べない
●十分な睡眠や栄養バランスの良い食事、ストレスをためないなど、体の免疫力を高める
●喫煙や口呼吸、歯ぎしりなどの癖を直す

歯周病のリスクチェック

□ 正しいブラッシング方法を知らない
□ 不規則な生活を送っている
□ ストレスをためやすい
□ 喫煙者
□ 歯医者に何年も行っていない
□ 高齢者

歯周病のセルフチェック

予防・対策はしっかりできていますか?

□  歯磨きを毎食後行っている
□ 起床後と就寝前は必ず歯磨きをしている
□ バランスのとれた食生活を心がけている
□ 歯科で定期的にクリーニングを行っている

下記のような症状はありますか?

□ 歯を磨くと出血する
□ 歯ぐきがやせてきた
□ 口臭が気になる
□ 歯ぐきが赤く腫れている
□ 歯間に食べ物が詰まりやすい
□ 少し歯がグラつく
□ 冷たいものや熱いものがしみる

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