歯と口のトラブル

口を開けるとカクンと音がする
顎関節症がくかんせつしょう

監修・取材協力:医療法人 タナカ歯科 院長
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田中 孝宜

Medical.T 編集部 M.Ito

  • 口の開閉時にカクンと音がする、痛くて大きく開けられない症状が現れる
  • 喫煙やストレス、食生活の乱れなども原因となる
  • 顎関節症の患者数は増加、中でも若い女性に多い
  • むし歯、歯周病にならぶ第3の歯科疾患と言われる
  • 日常生活の動作や癖、心理的ストレスから引き起こる症状が増えている

顎関節症の基礎知識

口を開けたり閉じたりする時に顎関節がカクンと音がする、痛みを感じて口が開かない、顎関節やその周辺に異常を感じる顎関節症。顎関節は耳の穴の前方にあり、下顎頭(かがくとう)、下顎窩(かがくか)、関節円板からできています。顎関節症は、骨と骨がこすれずに滑らかに動くようクッションの役割を担う関節円板のズレや変形が主な原因となって起きます。近年、顎関節症の患者数は増加しており、むし歯、歯周病にならぶ第3の歯科疾患と言われています。

顎関節症は4つのタイプに分類されます。

●顎関節症は4つのタイプに分類されます。
Ⅰ型:顎を動かす筋肉に障害が生じるもの
Ⅱ類:顎関節そのものが痛み、関節の包や靭帯が炎症を起こすもの
Ⅲ型:関節円板のズレ・変形によるもの
Ⅳ型:顎関節の骨の変形によるもの

顎関節症の近年の動向

顎関節に雑音や痛みを自覚している人は多く、特に20~30代の女性に見られます。

【顎関節の雑音を自覚する者の割合、性・年齢別階級】
【顎関節の雑音を自覚する者の割合、性・年齢別階級】
◎厚生労働省「平成28年歯科疾患実態調査結果の概要」を参考に弊社にて作成
©medical terrace produce by trend-sakura
【顎関節に痛みを自覚する者の割合、性・年齢別階級】
【顎関節に痛みを自覚する者の割合、性・年齢別階級】
◎厚生労働省「平成28年歯科疾患実態調査結果の概要」を参考に弊社にて作成
©medical terrace produce by trend-sakura

顎関節症の症状

口を開こうとすると顎関節や顎を動かす筋肉が痛む(開口時痛)、大きく口を開けられない(開口障害)、口を開けたり閉じたりする時にカクン、カクカクと顎関節に音がする(関節雑音)、顎関節やその周辺に違和感があるなどの症状が見られます。硬い食べ物が噛めない、大きな食べ物が食べにくいなど日常生活に支障が出る場合があります。

顎関節症の検査方法

視診・触診で顎関節の動きを確認します。顎関節症の主な検査としては、開口域測定、X線検査、CT検査、MRI検査が挙げられます。

顎関節症の原因

かつては噛み合わせの悪さが最大の原因とされていましたが、近年は生活習慣や心理的ストレスから引き起こる症状が増えています。生活習慣が関わっている場合は、パソコンやスマホ生活で上半身だけしか使わないことが増え、常に前傾姿勢になっていること、また、脳の疲れで深く眠ることができず、歯ぎしりなどで顎が圧迫していることなどが挙げられます。気付かずに行ってしまっている動作や癖、心理的ストレスなど複数の要因が絡み合い、慢性的に負担や負荷がかかることで顎関節症の症状が現れます。

顎関節症の治療方法

スプリント(マウスピース)療法が一般的です。上顎または下顎の歯列に被せるスプリント(マウスピース)を夜間睡眠中に使用することで、歯ぎしりなどで生じる顎関節への負担を軽減させます。痛みがある場合は、緩和させる薬物を処方。歯や口は生活習慣や心の健康と深くつながっている場合が多いため、日常生活を振り返り、症状を改善していくことも大切な治療です。

顎関節症の合併症

重症化すると、肩こりやめまい、耳鳴りなどが続いたり、口が開けられずに食事が摂れなくなったりする場合があります。

顎関節症の自宅療法(療養方法、再発防止など)

症状によりますが、治療期間はおおよそ1ヶ月から半年程度と言われています。顎関節症の発症には生活習慣が深く関わっていることを自覚し、癖や環境を見直しながら生活しましょう。

顎関節症の予防・対策方法

歯ぎしりや食いしばり、うつぶせ寝、パソコン・スマホによる前傾姿勢、頬杖など、気付かずに行っている動作や癖を改善することが、顎関節症の改善・予防につながります。日頃から口を大きく開けたり、下顎を左右に動かすなど、顎のストレッチを実行してみましょう。

顎関節症のリスクチェック

□ パソコン・スマホをよく使う
□ 20~30代の女性
□ 歯ぎしり・食いしばりが見られる
□ ストレスを感じやすい
□ 仕事や家事で疲れが溜まっている

顎関節症のセルフチェック

予防・対策はしっかりできていますか?

□ 自身の動作の癖を把握している
□ 顎のストレッチを行っている
□ 食事はよく噛んで食べている
□ バランスのとれた食生活、十分な睡眠をとれている

下記のような症状はありますか?

□ 口を開けると顎が痛い
□ 口が大きく開かない
□ 口を開ける時にガクン・カクと音がする
□ スムーズに口が開かない
□ 顎関節に違和感がある

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