歯と口のトラブル

唾液の分泌量が低下する
ドライマウス(口腔乾燥症)

監修・取材協力:医療法人 タナカ歯科 院長
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田中 孝宜

Medical.T 編集部 M.Ito

  • 唾液の分泌量が低下し、口の渇きが3ヵ月以上続く症状
  • 放っておくと口臭やむし歯、口腔感染症などのリスクが高まる
  • 噛む力の低下、薬の副作用、心理的ストレスなどが原因と考えられている
  • 加齢とともに患者数が増加

ドライマウスの基礎知識

唾液は1日0.5~1.5リットル排出され、口腔内で重要な役割を担っています。ドライマウスは、何らかの原因で唾液の分泌量が低下し、口の中が渇く、ねばねばする、喉が渇きやすいなどの症状が3ヵ月以上続くことを言います。放っておくと、口臭、むし歯、口腔感染症などのリスクが高まり、痛みやただれ、出血などの症状が伴うようになることも。加齢とともに患者数が増加傾向にあり、全身疾患のサインの場合もあるため、早めの検査・治療が必要です。
ドライマウスは、目で言えばドライアイ、シンプルに言えば口が渇くという病気。水分というものが人間あるいは生きとし生けるものにとっていかに大事なものか、そして乾燥がいかに良くない症状をもたらすか。人間には体にも心にも「うるおい」が必要です。

ドライマウスの症状

口が渇く、口の中が粘つく、舌がヒリヒリする、口臭が気になる、食べ物が飲み込みづらいといった症状が慢性的に続きます。

ドライマウスの検査方法

ドライマウスの検査では、唾液の分泌量を調べる唾液分泌検査が基本。安静時唾液と刺激時唾液を調べる方法があります。安静時唾液の検査は、リラックスした状態を15分間保ち、自然に流出する量を測定。刺激時唾液の検査は、10分間特殊なガムを噛み、噛むという刺激によって分泌される量を測定する「ガムテスト(10ml以上で正常)」と、乾燥したガーゼを2分間噛み、ガーゼに吸収される唾液を測定する「サクソンテスト(2g以上で正常)」があります。その他、唾液腺造影検査、口唇生体検査、血液検査などを行う場合があります。

ドライマウスの原因

唾液分泌量が低下する原因はさまざまなことが考えられます。唾液は食べ物をよく噛み、あごの筋肉を動かすと出やすくなります。やわらかい食品が増えた現代の食生活では、その筋肉が衰えてしまいがちなため、唾液分泌量が少なくなり、口の中が乾きやすくなると言われています。また、精神的に緊張状態にあると唾液が出にくくなることから、緊張やストレスが多い生活を続けると、口の渇きが慢性化してしまいます。その他、加齢によるホルモンバランスの乱れや、筋肉の衰え・鼻炎による口呼吸、アルコールの過剰摂取、薬の副作用、喫煙などが一因と考えられています。糖尿病や腎臓疾患、シェーグレン症候群などドライマウスを伴う疾患もあります。

ドライマウスの治療方法

原因を探ることが治療法を決める上で最も重要なポイント。糖尿病やシェーグレン症候群など明らかな疾患がある場合は、その治療が最優先となります。薬の副作用が疑われる場合は薬の変更や減量を行い、心理的ストレスが疑われる場合は生活習慣や環境を見直します。症状を和らげる場合は、唾液腺を刺激する、粘膜を保湿する、薬などで唾液の分泌を増やす治療が行われます。ドライマウスの治療はなかなかすぐに効果が現れにくいため、長期間にわたり根気強く取り組むことが大切です。

ドライマウスの合併症

口臭や味覚低下、虫歯や歯周病などの症状が見られます。

ドライマウスの自宅療法(療養方法、再発防止など)

口の中の潤いが少なくて食べづらいからと言ってやわらかいものばかりを食べていると、ますます唾液の分泌量が減ってしまいます。食事の工夫をして、しっかりとあごを動かしてよく噛んで食べるようにしましょう。硬めのガムや柑橘類は唾液の分泌を促すと言われています。また、保湿力の高い洗口液、保湿ジェルや保湿スプレー、ウェットマスクのような保湿ケア製品を使ったり、加湿器で部屋の湿度を高めたりして、口の中の乾燥を防ぎましょう。

ドライマウスの予防・対策方法

普段から食べ物をよく噛んで食べるよう心がけ、噛む力の低下を防ぎましょう。ドライマウスは心理的ストレスや生活習慣が原因となる場合があるため、規則正しい生活や適度な運動はもちろん、睡眠を十分に取り疲れをためないようにしましょう。人と楽しく会話したり、笑ったり、歌ったりしても唾液の分泌が促されます。唾液は、むし歯や歯周病を防ぐ働きをしています。ドライマウスを予防することは、口の健康維持のためにも重要です。

ドライマウスのリスクチェック

□ 食べ物をよく噛まない、早食い
□ ストレスを感じやすい
□ 閉経後の女性
□ 糖尿病を患っている
□ 薬を服用している
□ 喫煙者

ドライマウスのセルフチェック

予防・対策はしっかりできていますか?

□ 食べ物をよく噛む
□ 口呼吸をしていない
□ タバコやアルコールは控える
□ 部屋が乾燥していない
□ 十分に休息をとりストレスをため込まない

下記のような症状はありますか?

□ □の中が渇く状態が続く
□ 唾液が少ない
□ 口臭がする
□ 口の中がネバネバする
□ 食べ物が飲み込みにくい
□ 味覚がおかしいと感じる
□ 舌がひび割れて痛い

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